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高止まり傾向続く正社員の人手不足「旅館・ホテル」「飲食店」では高水準続くも低下に

2024.05.07

帝国データバンク(以下:TDB)は、2024年度の業績見通しに関する調査で業績の下振れ要因として「人手不足の深刻化」をあげる割合がトップとなり、多くの企業が懸念している実態を明らかにした。実際に、2023年度の人手不足に起因する倒産件数は313件となり、過去最多を記録し前年度から倍増。事業継続の可否を決める大きな要因の一つと考えられる。そこでTDBは、今後の業績維持・拡大を大きく左右する企業の人手不足の状況について、調査を実施した。ここでは調査結果の概要をお伝えする。

2024年度の業績見通しに関する企業の意識調査(帝国データバンク)

正社員、非正社員ともに人手不足割合は高止まりの傾向

TDBによると、2024年4月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業の割合は51.0%だったという。毎年4月は新卒新入社員が入社することで人手不足が緩和される傾向があるが、前年同月比でもわずか0.4ポイントの低下にとどまり、高止まりが続いている実態が明らかとなった。また、非正社員の同割合は30.1%で、前年同月から0.6ポイント低下。雇用形態を問わず、人手不足割合は高止まりの傾向にあることがわかった。

続いてTDBは、正社員の人手不足割合を業種別に分析。その結果、トップとなったのは主にIT企業を指す「情報サービス(71.7%)」で、18カ月連続で7割以上と高水準が続いているという。また、活況なインバウンド需要がみられるなかで「旅館・ホテル(71.1%)」も深刻な人手不足にあることがわかった。その他「建設(68.0%)」「自動車・同部品小売(64.9%)」など6業種が6割台となっている。

なお、非正社員では「飲食店(74.8%)」「旅館・ホテル(63.8%)」が上位に。どちらも高水準は続いているものの、前年同月からは緩和がみられた。

出典元:人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)(帝国データバンク)

「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合は低下傾向

「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合は低下傾向

TDBは、2024年3月には訪日外国人が初の300万人を突破するなど、行動制限のない「ポストコロナ」が到来してから1年が経過し、活況な旅行需要に注目。

「旅館・ホテル」は人手不足の深刻な状況が続いている一方で、8割に迫る水準まで上昇していた人手不足割合は2023年と比較して低下。2024年以降は7割前後で推移している。 「飲食店」においても非正社員では74.8%と引き続き高水準ではあるものの、8割を上回っていた2023年から低下しており「旅館・ホテル」と同様の傾向がみられた。

TDBによると、両業種ともに低下したものの、人手不足を感じている企業のなかで従業員数の変化をみると傾向はさまざまで、正社員が増加した割合はいずれも2割台にとどまっているという。一方で、非正社員の方が増加した割合が高く、特に飲食店では40.0%に。TDBはこうした従業員数の増加が、両業種の非正社員における人手不足割合低下の背景にあると分析している。

まとめ

まとめ

総務省が発表した2024年3月時点の労働力調査結果(※)では、就業人口が20カ月連続で増加していることが明らかになっている。こうした背景から、今後の見通しについてTDBは、人手不足割合は高止まりで推移するも、就業人口の増加が続けば低下に転じる可能性があると予測している。

一方で、人手不足による機能不全が顕在化する業種もある中で、TDBは「人手不足が常態化すれば業績の維持・拡大が期待しにくくなるなか、中長期的に人材確保や業務効率化に向けた対策を講じられるかが、今後の事業継続を大きく左右するといえるだろう」とコメントした。

※ 出典元:労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)3月分結果(総務省統計局)