「ジョブ型人事」成果の実感に等級軸と施策軸の数と運用による差 リクルートMS調査
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:山﨑淳)は、株式会社日経BPが発行する「日経ビジネス」と共同で、従業員300人以上の企業で職務・役割型の等級制度を一部でも導入している企業の人事担当者を対象に「ジョブ型人事制度の運用実態調査」を実施した。調査では、ジョブ型人事制度を導入している企業の約2割が成果を実感できていない一方、制度の設計だけでなく、複数施策の組み合わせや人事・管理職による運用が成果を左右する実態が明らかになった。
調査概要
調査名:ジョブ型人事制度の運用実態調査
調査目的:日本企業におけるジョブ型人事制度の運用状況と課題を多角的に把握し、成果につながる要因を明らかにする
調査対象:以下の企業に務める人事
・従業員規模300名以上
・役割・職務型の等級制度を一部でも導入している
調査方法:インターネット上でのフォーム回答による
実施時期:2026年7月23日~28日
有効回答数:636
出典元:「ジョブ型人事制度の運用実態調査」の分析結果を発表(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
※%は小数点第2位で四捨五入されているため、文中・表中の数値を足し上げた値が、100.0にならない場合がある
ジョブ型導入の目的は「成果による処遇のメリハリ」
本調査の結果、ジョブ型人事制度の導入目的として最も多かったのは「成果による処遇のメリハリ(53.9%)」だった。次いで「年功的な賃金からの脱却(45.4%)」「採用力強化(42.1%)」が続いている。
「グローバルでの人事制度の統一」は18.9%だったものの、それ以外の目的はいずれも約4割前後の企業が選択していた。ジョブ型制度が報酬改革だけでなく、人材戦略やキャリア形成など幅広い課題への対応策として導入されていることがうかがえる。
一方、導入目的ごとの成果実感を見ると、同じ目的で制度を導入した企業でも評価には差があった。各目的で約半数が成果を実感している一方、約2割は成果を実感できていない。
特に「採用力強化」と「キャリア自律の促進」は、成果を肯定的に捉える企業と否定的に捉える企業の差が、それぞれ26.5ポイント、25.8ポイントと比較的小さいことが判明。制度を導入するだけでは、採用力やキャリア自律といった効果につながりにくい可能性があることがうかがえる。
等級軸や施策数が成果を左右
さらに本、等級制度の設計にも成果実感との関連が見られた。職能・職務・役割の等級軸を1つだけ設けている企業よりも、2つまたは3つを組み合わせている企業のほうが成果実感が高いことが可視化された。
特に「キャリア自律の促進」では、等級軸が1つの企業における成果肯定群が6.8%だったのに対し、2軸・3軸では4割弱となっている。
ジョブ型人事制度を一律に導入するのではなく、職種や階層など自社の人材構造に応じて複数の等級軸を組み合わせることが、成果につながる可能性がある、といえるだろう。
また本調査では、実施している施策の数が多い企業ほど成果実感も高くなる傾向が確認されている。7~15の施策を実施する企業では成果肯定群と否定群の差が「採用力強化:55.4ポイント」「成果による処遇のメリハリ:53.2ポイント」「キャリア自律の促進:46.7ポイント」と報告された。
一方、施策数が0~1の企業では、キャリア自律の促進について成果肯定群と否定群の差がマイナスだったという。ジョブ型人事制度は単一の制度を導入するだけではなく、評価・育成・キャリアなど複数の施策を連動させることが重要といえる。
運用の壁は「人事部の人員不足」と「管理職の能力不足」
そのほか、ジョブ型人事制度の運用上の障壁として最も多かったのは「人事部の人員不足(34.3%)」だった。次いで「人材マネジメントに関する管理職の知識・能力不足(29.4%)」「人事部の企画力・専門性が低い(27.8%)」「人材マネジメントに関する管理職の権限が弱い(25.6%)」が続いている。
今後導入したい施策としては「多面評価(360度サーベイ)(27.7%)」「管理職の評価力向上研修(27.0%)」「各組織・職種など専門領域別のスキル評価(25.4%)」が多く挙がった。
一方、廃止意向が比較的高かったのは「各組織・職種など専門領域別のスキル評価(34.1%)」「職務記述書の作成・公開(32.2%)」「外部労働市場に合わせた賃金水準設計(30.2%)」が上位に挙げられた。
まとめ
ジョブ型人事制度を導入している企業の間でも成果実感には大きな差があり、制度の導入自体が成果を保証するものではないことが分かった。特に成果を実感している企業では職務記述書の活用、職務・役割と処遇の連動、定期的なフィードバックなど、制度を現場で機能させる運用が重視されている。
また、実施する施策数が多い企業ほど成果実感が高いことから、評価・報酬だけでなく、育成やキャリア支援、人材配置などを一体的に設計することが重要だと考えられる。
制度の適切な設計はもちろん、管理職が人材マネジメントを行えるよう研修や権限移譲を進めることが課題といえるだろう。
さらに、今後はスキル評価や360度評価など、人材の能力・適性を可視化する仕組みも重要性を増すことが予想される。ジョブ型人事を自社に定着させるために、制度と運用、人材データを連動させた人事基盤を整えていきたい。












