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ジェットスター、多様性あふれる職場づくりの秘訣。多様な人材が集う理由

2019.06.25

 少子高齢化に伴う労働人口の減少で、多くの業界で人手不足が深刻化し社会問題となっている。航空業界も人材難に悩む業界のひとつであり、年々増え続ける訪日外国人への対応にも備えるべく、人材の確保は必要不可欠だ。

 そんな航空業界の中で、採用の間口を広げ異業種からの採用強化や男性キャビンクルー(客室乗務員)の積極的な採用など、多様性を発揮する会社がある。国内LCCシェアNo.1の「ジェットスター」だ。

 オフィスのミカタでは、ジェットスターが取り組む”多様性”を活かした職場環境づくりや、考え方について取材を敢行。同時に実際に現場で働くキャビンクルーの方へも“多様性”の現場から見る「働き方」や「働きがい」について話を伺った。

お互いを尊重し合える職場環境

お互いを尊重し合える職場環境

 ジェットスターといえば、国内LCCシェアNo.1という実績を誇る会社で、過去に「片道数百円で旅行ができる」などの大胆なキャンペーンを打ち、世間の度肝を抜いてきた。

 そんな同社では会社が急成長していくにあたり、組織づくりの面では様々な取り組みをしている。異業種からの人材採用を積極的に行い、多様な人材を活かしながらも素晴らしいチームワークを発揮し、確実に成果を出している。

 「異業種からの人材採用を推進する理由」、「多種多様な人材をまとめる組織づくり」、「働きやすい環境づくり」などは、一体どの様に行っているのだろうか? 気になるその秘訣を、ジェットスターに伺った。


・専門的な知識を要する航空業界の中で、あえて異業種からの中途採用を増やしている理由、男性キャビンクルーを積極的に採用している理由は何でしょうか?
― 新たなビジネスを展開する中で、同業種以外の経験をお持ちで、斬新かつ新鮮なアイデアが必要不可欠です。専門知識のみならず、お客様目線で物事を考える必要もあるため異業種からの中途採用も行っています。

 また、当社においてはジェンダー(性別)に関わらず、ジェットスターで働きたいという意思を持っている人を歓迎し、採用を行っています。


・多様性を活かした職場の「働きやすい環境づくり」や「教育制度」について、どの様な工夫をしていますでしょうか?
― ジェットスターのバリューにある『One Team』、『心から思いやり』にあるように、お互いを尊重し合い、敬意を示し業務を進めております。常に情報共有を行い、今何が起きているのかを全社員が把握することにより、チームを一致団結させています。ジェットスターグループ全体(オーストラリア、ベトナム、シンガポールで展開するジェットスターグループの各エアライン)で行っている教育・訓練を日本にも取り入れており、世界基準の教育制度を実施しています。

・多様性にあふれた現場づくりをするうえでの問題点や注意すべき点はどの様な部分でしょうか?
― ジェットスターグループのトレーニングを受講しているので、全員で共通の理解を得ています。ただし、特に多様性という言葉にとらわれず、自然に理解、行動で示している社員が多いです。



 グループの考え方・教育方針がしっかりしているからこそ、同じ方向を向き、その考え方に沿った行動ができるということだ。多様性ということにとらわれるのではなく、全社員が共通の理解を得ているからこそ、素晴らしいチームワークを発揮できる。

 また、ジェットスターでは国内LCCで唯一の自社トレーニングセンターを持っており、そこで行われる訓練で最も大切にしているのが、「One Team」という言葉で表現されるチームワークだ。緊急時にお客様の命を守るには、キャビンクルー同士で何でも意見を出し合える関係の構築が重要だ。妥協を許さない厳しい訓練の中で最強のチームワークと冷静な判断ができるようになり、安全な空の旅を提供できるのだ。

元インターナショナルスクールの保育士 岡田 真梨子 氏

元インターナショナルスクールの保育士 岡田 真梨子 氏

 前章で述べた通り、ジェットスターでは異業種からの転職が増加している。元ショールームアテンダントや、旅行会社の元営業ウーマン、元外資系ホテルスタッフなど、経験豊かな顔ぶれが並ぶ。
 
 岡田真梨子さんも、前職ではインターナショナルスクールの保育士という経歴を持っており、キャリアの経験を存分に発揮している一人だ。短期大学の保育課を卒業後、語学留学でアメリカに渡り、帰国後はインターナショナルスクールで子供たちに英語を教える仕事をしていた。自分らしさを追求するために短期大学では保育を専攻したが、幼いころから抱いていたキャビンクルーになりたいという夢が忘れられず、思い切って転職したという。

 前職での経験やスキルをどう発揮しているのかや、業界の違いで感じた事、ジェットスターでの働く環境について話を伺った。


・前職の経験やスキルをどのように(どんな場面で)活かせているでしょうか? また、前職の経験やスキルを活かし、現場の改善やイノベーションは起こせておりますでしょうか?
― お子様連れのお客様がいらっしゃると、担当エリアにかかわらず積極的にご挨拶に行くようにしています。以前、小さな双子のお子様連れのご家族がご搭乗された便に乗務していた際、お子様2人が泣き出してしまい、お父様もお母様もなかなか涙を止められずに困っていらっしゃったという場面に遭遇しました。

 前職の経験から、ご家族ではない人物から話しかけられるとお子様も気持ちの切り替えがしやすい場合があることを知っておりましたので、お座席でお利口さんに頑張っていたお子様に「偉いね」とお声がけしながら、周りの方へのご配慮から恐縮していらっしゃったご家族の方に対しても、少しでもお気持ちに寄り添い、おくつろぎ頂けるお手伝いができないかとお話ししていたところ、皆様の気持ちが少しずつ切り替えられた様子を感じ、お子様も笑顔を見せてくれるようになりました。

 その結果、機内の雰囲気も落ち着きを取り戻せたという経験がございます。

 お客様には様々な理由で飛行機をご利用頂いておりますが、ご家族連れの方、ご旅行の方、お仕事の方と、それぞれのお客様が少しでもゆったりとした時間をお過ごし頂けるよう、お客様の変化を敏感に察知し対応できるクルーを目指し日々乗務しております。

 1便1便のお客様と真摯に向き合う気持ちでおもてなしをすることは、お客様の弊社への信頼を獲得することに繋がるだけではなく、その他にも沢山の意味を持っていると考えております。

 例えば、私が日々先輩方のお客様へのアプローチを見たりしながら学ばせて頂いているように、後輩クルーに対して、お客様目線を大切にしながら”自分らしいサービスを行う”ということはどういうことなのか、そのように考えられるきっかけ作りとなるような小さな風を少しでも現場にて起こせていたら幸いです。

 
・ジェットスターの教育制度について、どの様に感じておりますでしょうか? また、どういった部分が優れていると感じますか?
― 現場の状況に合わせて「今何が必要なのか?」と、常により良い教育体制を模索して取り入れていこうとする”フレキシビリティ”と”スピードの速さ”に関して、ジェットスターらしさを感じますし、その点が優れていると考えます。

 私が1年目の時には、入社後のトレーニングを終え乗務を開始してからも、機内で“メンター”と呼ばれる先輩方に側について頂き、一緒に働きながら実際のフライトを通して感じた疑問点をその場で相談したり、解決したりすることのできる教育制度がありました。

 もちろん、そういった特別フライトが終わった後も困ったことや疑問に思うことは、その都度先輩や上司に安心して相談し解決していける体制はしっかりと整ってはいるのですが、私の個人的な意見としましては、トレーニングと実際のフライトでのギャップなどを感じずに働き始められたのはそういった制度の助けがあったことが大きいように思います。

 その後、その制度自体は更に形を変えているようですが、毎トレーニングごと、時代に合った新しい教育制度が導入され、新入社員の方が現場に出た後のフォローアップ体制の構築、改善が続けられており、常により良いものを追求してスピーディーに会社に取り入れていこうとする姿勢は魅力的であると感じています。


・現在の現場は働きやすい環境でしょうか? どういった部分が働きやすいと感じておりますでしょうか?
― はい、働きやすい環境だと感じております。日系と外資系両方の魅力を持った風通しの良い職場で、スケジュールのスワップが可能であったり、充実したスタッフトラベル制度などもあったりすることから、弊社の客室乗務員職は離職率も大変低く、そのような点を含めて総合的に考察しても、ジェットスターが働きやすいというのは私一個人の意見ではなく、他の方々にとっても同じなのではないかと考えております。

 キャビンクルーの部署に限定して更にお話ししますと、弊社には世界各国様々な航空会社にて乗務したことのある人や、他業種にて活躍されていた人など、様々な魅力を持ったキャビンクルーが一致団結して働いています。多様な経験と考えを持ったクルーがいるからこそ、枠に囚われず、和気藹々とした雰囲気の中、毎日充実したフライトができているのだと思います。

元外資系ホテルマンの男性キャビンクルー 庭本 太郎 氏

元外資系ホテルマンの男性キャビンクルー 庭本 太郎 氏

 キャビンクルーというと女性のイメージが強いが、男性クルーが多いのもジェットスターの特徴のひとつだ。今回は数多くいる男性クルーの中でも外資系ホテルでの接客業務経験のある庭本太郎さんに、キャビンクルーになった経緯や、女性が多い職種で働くことの苦労について話を伺った。

・なぜ今のご職業をご選択されたのでしょうか? また、男性キャビンクルーとして働くことに抵抗はありましたでしょうか?
― アメリカの航空会社を利用した時、男性のキャビンクルーが数名乗務されていて、とてもスマートでホスピタリティあるサービスを受けたのがきっかけです。

 キャビンクルーは女性のイメージが強かったので入社前は抵抗がありましたが、キャビンクルーとして空を飛びたいという気持ちの方が強く、転職を決意しました。


・女性が多い職種の中で、うまく溶け込めるか不安はありましたでしょうか? また実際に働いてみてどうでしたか?
― 女性ときちんとコミュニケーションが取れるかや上下関係の厳しさが不安でした。

 しかし、実際に一緒に働いてみるとフレンドリーで明るい女性が多く、とても働きやすい環境です。また女性同士のクルーの中に男性が入ると「場が和む」と実感しております。女性が圧倒的に多い環境でも自然なコミュニケーションが取れるように意識しております。

 今はとても楽しく働けています!


・男性クルーが入ることで、どの様な利点があるとお考えでしょうか?
― キャビンクルーの役割は「保安要員」でもあり機内の安全が最も優先されます。その為、機内でトラブルが起こった際に、男性クルーが乗務していることは頼もしい存在になると思います。またお客様の手荷物収納のお手伝いなど、力仕事においても利点があり航空機の定時運航率向上に繋がると考えております。


・業界内で女性クルーの比率が多い現状に対して、どのようにお考えでしょうか?
― 昔から日本のキャビンクルーは女性同士の縦社会が厳しく体育会系のようなイメージです。男性を積極的に採用することによって、日本の航空業界は変わっていくと考えております。外資系航空会社のように男性にとっても一般的な職業になるように願っています。

多様性にあふれる社会に

 今回、取材をしてみて感じたのは、事業を展開する延長線上で、よりよいサービスを顧客へ提供するために採用活動や人材活用をしてきた結果が、多様性あふれる職場になったということだ。

 今、世界各国の主要企業では、多くの企業がダイバーシティ・マネジメント戦略をとっている。多様性あふれる職場環境を作ることは、「人材の確保」「業績の向上」「イノベーション」など様々な効果がある。

 また、多様性にあふれる社会になることは、企業だけでなく働く人々にとっても幸せなことだ。あらゆる個性と個性が混ざりあいながら、他社を受容し、受け入れ、本当にやりたかった仕事をする。

 そのような社会になるには、ジェットスターのように今までの固定概念や規制を取り払うことが重要だと思う。それを続けていく事で、結果として多様性あふれる会社・社会になり、日本企業・日本全体が活気あふれる光景になっていくのではないだろうか。

 ひとりひとりが輝ける社会になるよう、多くの企業が多様性を受け入れる体制になってほしい。