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労働保険の電子申請の手続き方法について解説。ポイントをおさえてスムーズな申請を

2021.06.22

「行政手続きコスト削減のための基本計画の改定」により、2020年4月から特定の法人において、「労働保険」を含む社会保険の一部の手続きの電子申請が義務化された。労働保険料の計算や手続きは複雑なため、電子申請の方法を知りたいと考える担当者もいるのではないだろうか。

今回は、労働保険の手続きを電子申請で行う方法や手順を紹介する。ポイントをおさえて、スムーズに手続きが行えるようにしよう。

目次

●労働保険とは
●労働保険手続きの電子化とは
●労働保険の電子申請の方法
●労働保険の電子申請の手続き
●まとめ

労働保険とは

「労働保険」とは、「労災保険(労働者災害補償保険)」と「雇用保険」の総称だ。保険の給付は両保険制度それぞれで行われているが、保険料の徴収やそれに伴う手続きについては「労働保険」一体のものとして取り扱っている。まずは、それぞれの保険の特徴や保険料負担、申告・納付に必要な手続きを見てみよう。

労災保険の概要
「労災保険」は、従業員が業務または通勤に伴う怪我や病気、死亡をした場合に本人や遺族に必要な給付を行うものだ。従業員を1人でも雇用していれば業種や企業規模を問わず適用事業となり(農林水産の一部の事業を除く)、労災保険料は企業が全額を負担する。

雇用保険の概要
「雇用保険」は、失業者や教育訓練受講者、育児休業取得者に対して必要な給付を行い、労働者の生活と雇用の安定を図るための制度。原則、「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」の両方に該当する従業員が加入対象だ。雇用保険料は企業と従業員の双方が負担するが、保険率や負担割合は事業の種類によって異なる。

労働保険の年度更新手続き
企業が毎年6月1日から7月10日までに行わなければならない労働保険料の申告・納付手続きを、「年度更新」という。年同更新の手続きでは、期日までに前年度の労働保険料を精算するための「確定保険料」と、新年度の見込み額である「概算保険料」とを併せてを申告・納付しなければならない。

参照記事:「 おさえておきたい!バックオフィスの基礎知識 Vol.1 6月は労働保険料の更新月。一体どのような保険なの?

労働保険手続きの電子化とは

労働保険手続きの電子化とは

電子化(電子申請)とは、これまで書面を用いて行っていた申請・届出などの手続きを、インターネット経由で行うこと。2020年4月から適用される電子申請の義務化は、労働保険の手続きも対象だ。ここでは、電子化の義務対象となる企業や労働保険の手続き、電子申請のメリットを紹介する。

電子申請の対象となる「特定の法人」とは
 電子申請義務化の対象となる法人は、以下の通りだ。

・資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社

従業員数や被保険者数ではなく、資本金の額で対象となるか否かが決まることに注意しよう。なお、社会保険労務士や社会保険労務士法人が対象となる法人に代わって手続きを行う場合も同様だ。

参考:厚生労働省「令和2年4月から特定の法人について電子申請が義務化されました。」

対象となる労働保険の手続き
電子申請の対象となる労働保険における手続きは、以下の通りだ。

【労働保険】
○継続事業を行う企業が提出する以下の申告書
・年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
・増加概算保険料申告書

【雇用保険】
○被保険者資格取得届
○被保険者資格喪失届
○被保険者転勤届
○⾼年齢雇用継続給付支給申請
○育児休業給付支給申請

労働保険の「年度更新に関する申告書」は、5月頃に所轄の労働局から送付される。電子申請義務化の対象と考えられる事業場の申告書には「電子申請対象」と印字されているので、該当する場合は必ず電子申請にて手続きを行わなければならない。

電子申請のメリット
労働保険の手続きを電子申請で行うことには、以下のメリットがある。

・行政機関へ出向くための往復時間や待ち時間、交通費が削減できる
・自宅やオフィスにいながら24時間365日いつでも申請等の手続きが行える
・申請・届出の書式(用紙)を入手する必要がなくなる

電子申請によって手間や時間を削減することによって、担当者の負担減や業務の効率化につながるだろう。

労働保険の電子申請の方法

労働保険の電子申請には、政府が提供している「e-Gov(イーガブ)」のポータルサイトから申請する方法と、市販の電子申請用ソフト(API対応)を利用する方法とがある。それぞれの申請方法の特徴を見ていこう。

「e-Gov(イーガブ)」から直接申請する方法
「e-Gov」とは、行政情報の検索や案内サービスの提供を受けたり、行政機関への申請・届出等の手続きを電子申請で行えたりするポータルサイトだ。申請書類や添付書類を一項目ずつ入力する「通常申請」と、圧縮ファイルを用いて複数の申請を行う「一括申請」とがある。電子化義務の対象となる大企業では、複数人のデータや添付書類などを1つにまとめてアップロードすることができる「一括申請」が便利だろう。

APIソフトを使用して申請する方法
APIとは、アプリやソフトウェア同士を連携させる仕組みのこと。APIに対応したソフトを利用すれば、企業内で既に利用している人事や給与等のデータを用いて、労働保険の申請に必要な添付書類を自動で作成することができる。改めてデータ入力やフォーマットの作成をする必要がなく、ワンクリックでe-Govへの電子申請が可能なため、担当者の手間と時間が大幅に削減できるだろう。

労働保険の電子申請の手続き

労働保険の電子申請の手続き

労働保険の手続きは多岐に渡るため、手続きの流れや事前準備の内容を把握しておくことが重要だ。ここでは、e-Govを利用して電子申請を行う場合の手続きの流れを紹介する。

【事前準備①】電子証明書の取得
労働保険の電子申請では、「電子証明書」が必要だ。電子証明書とは、書面での手続きにおける「印鑑証明書」に相当するもので、本人確認手段やデータ改ざん防止の為に利用する電子的な身分証明書のこと。

電子証明書には、マイナンバーカードなどを用いた「ICカード形式」と商業登記に基づく電子認証などを用いた「ファイル形式」の2種類があり、官公庁または民間の「認証局」と呼ばれる発行機関から取得が可能だ。詳しくは、e-Govのサイトを確認しよう。

なお、2021年3月より、1つのID・パスワードでさまざまな法人向け行政サービスにログインできる「GビスIDアカウント」(「GビズIDプライム」「GビズIDメンバー」のいずれか)を使用する場合は、電子証明書の取得が不要とされている。

参考:e-Gov「電子証明書のご案内」
参考:経済産業省「gBizIDへようこそ。」

【事前準備②】パソコンの環境設定
実際の申請作業に入る前に、電子申請で使用するパソコンの環境設定を行おう。環境設定の手順は以下の通りだ。

1)「e-Govアカウント」「GビスIDアカウント」「Microsoftアカウント」いずれかのアカウントを準備する
2)ブラウザの設定を確認し、必要に応じてポップアップブロックの解除や信頼済みサイトへの登録を行う
3)e-Gov電子申請アプリケーション(無料)をインストールする

既に使用しているアカウントがない場合は、事前にアカウントの登録作業を行っておこう。なお、GビスIDアカウントを使用する場合は、「GビズIDプライム」「GビズIDメンバー」のみが使用可能とされており、「GビスIDエントリー」のアカウントは利用できないことに注意が必要だ。

参考:e-Gov「利用準備」

申請・届出
事前の準備ができたら、実際に申請・届出を行おう。e-Govのウェブサイトのトップページから申請する方法は以下の通りだ。

1)e-Govのトップページから「電子申請」をクリックする
2)「ログイン」をクリックし、「e-Gov電子申請アプリケーションを起動」を選択する
3)e-Govアカウントのメールアドレスとパスワードを入力してログインする
 (もしくは、画面下部にある認証サービスごとのログインボタンからログインする)
4)「手続検索」をクリックし、手続名称を入力(例:「年度更新申告」)して検索する
5)検索結果の中から該当する手続きをクリックする
6)労働保険番号・アクセスコードを入力して申告書入力画面を表示させる
7)必要な情報を入力し「OK」をクリックする
8)提出先に所轄の労働局を指定し、電子証明書を添付して「提出」ボタンを押す

実際の電子申請は、厚生労働省のホームページで公開されているそれぞれのマニュアルを参考にして行おう。申請した手続きの事務処理状況は、「マイページ」から随時確認することが可能だ。提出機関による審査と申請受理が行われると公文書が発出されるので、マイページからダウンロードして取得すれば手続きが完了となる。

参考:厚生労働省「労働保険関係手続の電子申請について」
参考:厚生労働省「e-Gov電子申請利用マニュアルの紹介」

まとめ

労働保険の手続きを電子申請で行うためには、スムーズに作業が進められるよう、「電子証明書やアカウントを取得しておく」「パソコンの環境設定を行っておく」などの事前準備が鍵となりそうだ。現在、電子申請の義務化対象は大企業などの特定の法人のみとなっているが、今後は中小企業も対象となる可能性がある。作業時間や手間を減らし業務の効率化を図るためにも、早めの対応を心がけよう。

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