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保管義務・期間を遵守して効率よく適切に会社書類を管理する保管方法を解説

2022.06.15
オフィスのミカタ編集部

ビジネス文書には法律で定められた保存期間があるため、該当する書類を適切に管理しなければならず注意が必要だ。この記事では会社書類を管理するための保管方法について解説する。

文書の作成・発生から廃棄までを循環する書類の運用・管理のワークフロー

ビジネス文書には、ライフサイクルと呼ばれる作成から廃棄までの流れが存在する。ここでは各工程での管理のポイントについて解説していく。

処理
文書の処理とは、実際に文書を決裁や承認のために閲覧・掲示・配布することだ。もし文書を電子化する場合には、このフェーズで行っておくと良いだろう。

保管
文書の保管とは、作成・発生時点から時間があまり経過していない文書や頻繁に使用する文書を、すぐに取り出して閲覧できるよう社内で保有しておくことである。

保存
文書の保存とは、作成・発生時点から時間が経っている、またはほぼ使用しない文書を保存期間が満了になるまで保有しておくことである。

廃棄
保存期間を過ぎたあるいは不必要になった文書は、情報漏洩に注意するためシュレッダーなどを使用して適切に廃棄する。

文書のライフサイクルから「保管」と「保存」は扱いが異なる

文書のライフサイクルにおいて、「保管」と「保存」の扱いは下記の通りだ。

保管:今年度あるいは前年度に作成した文書
保存:前々年度以前に発生した・3年以上の保存義務がある文書

保管は使用頻度が高い文書であり、保存は使用頻度が低い文書ということになる。

会社で扱う書類は法律で定められた保存期間の義務

企業で扱う書類は種類によって法律で定められた保存期間が存在する。ここではそれぞれの保存期間ごとに該当する書類を紹介する。

法律では義務付けられていないが永久保存が必要な書類
法律で義務付けられていないが、文書の性質から永久保存が必要とされる書類がある。

・定款
・登記、訴訟関係書類
・社規、社則、これらに関連する通達文書
・重要統計文書
・従業員の労務、人事、給与、社会保険関係の書類
・労働協約に関する書類
・表彰や懲戒に関する文書
・決算に関する書類
・固定資産に関する書類

30年間の保存が義務付けられている書類
30年間の保存が義務付けられている書類は全て人事に関するものである。

・労働者に関する作業概要などの定期記録
・上記労働者の特定化学物質等健康診断個人表
・焼却施設等作業の記録
・常時焼却施設等のダイオキシン類の濃度の定期測定記録
・放射線業務従事者の健康診断記録

10年間の保存が義務付けられている書類
10年間の保存が義務付けられている書類は総務及び経理に関するものである。

・株主総会、取締役会、監査役会、委員会の議事録
・上記以外の重要会議の議事録
・満期または解約となった契約書
・経営管理のために重要で後列となる文書
・計算書類および附属明細書
・会計帳簿および事業に関する重要書類(総勘定元帳、印鑑簿など)
・月次・年次決算書類
・製品の製造、加工、出荷、販売の記録
・重要な文書(損害保険、福利厚生など)

7年間の保存が義務付けられている書類
7年間の保存が義務付けられている書類は経理に関するものである。

・取引に関する帳簿(仕訳帳、買掛帳など)
・決算に関して作成された書類
・電子取引の取引情報に関わる電磁的記録(注文書、契約書など)
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書
・課税仕入などの税額の控除に関する帳簿、請求書
・源泉徴収簿
・現金収受や預貯金の取引で作成された取引証憑書類(領収書など)
・有価証券の取引に際して作成された証憑書類(有価証券受渡計算書など)
・取引証憑書類(請求書、契約書、注文清書など)

5年間の保存が義務付けられている書類
5年間の保存が義務付けられている書類は、経理及び総務、人事に関するものである。

・事業報告
・監査報告、会計監査報告
・会計参与が備えおくべき計算書類、附属明細書、会計参与報告
・金融機関等が保存する非課税貯蓄申込書、非課税貯蓄申告書などの写し
・金融機関等が保存する海外転勤者の財産形成非課税住宅貯蓄継続適用申告書、海外転勤者の国内勤務申告書などの写し
・金融機関等が保存する退職等に関する通知書
・退職等に関する通知書
・海外転勤者の財政形成非課税住宅貯蓄継続用申告書、国内勤務報告書などの写し
・従業員の身元保証書
・誓約書
・事業報告
・有価証券届出書・有価証券報告書とその添付書類、訂正届出書(報告)の写し
・契約期限が伴う覚書、念書、協定書など
・重要な内容の発信・受信文書
・産業廃棄物管理票の写し

3年間の保存が義務付けられている書類
3年間の保存が義務付けられている書類は人事及び総務に関するものである。

・労働者名簿
・賃金台帳
・雇入れ・解雇・退職に関する書類
・災害補償に関する書類
・賃金のその他労働関係の重要書類(タイムカードなど)
・労災、労働保険に関する書類
・派遣元、派遣先管理台帳
・四半期、半期報告書とその訂正報告書の写し
・官公署関係の簡易な認可・出願等の文書
・業務日報、社内会議の記録、契約書など後に参照の必要性のある文書など

マイナンバーが記載された書類は保存期間を過ぎたら迅速に廃棄

マイナンバーは企業が従業員を直接雇用する場合、税金や社会保障の関連手続きで必要になる個人情報だ。マイナンバーが記載されている書類は以下が挙げられるが、保存期間を過ぎたら廃棄して記録しておく必要があるため、期間を必ず確認しておくようにしよう。

・扶養控除等申告書
・雇用保険被保険者資格取得届
・健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
・支払調書

また、マイナンバーの適切な管理方法については以下の記事で詳しく解説している。気になる方は一読してほしい。
企業が行うマイナンバー管理とは?安全管理措置とシステム活用のメリットなどを解説

書類の保存期間を遵守して保管するための効率的な運用・管理方法

ここでは書類の効率的に保管するための運用・管理方法について解説する。

Excelなどで書類のステータスを一元管理する
Excelで簡易的な管理台帳を作成し、項目を分けることで書類のステータスを管理する方法がある。基本的な項目の一例は下記が挙げられる。

・作成者名
・文書名
・作成日
・保存期間
・廃棄日

関数を組むことによって保存期間が過ぎた列に色付けしてアラートを出すことが可能になる。ただし、Excelはあくまでも表計算ソフトなので、管理する書類が膨大な場合は課題が生じるケースがあるため注意が必要だ。

文書管理そのものをアウトソーシングする
文書管理自体を全てアウトソーシングすることで、業務効率化が見込まれ自社のコア業務へリソースを割くことが可能になる。また、文書を保管するためのコスト削減やワークフローの効率化が期待できるが、サービスのランニングコストを事前に把握しておく必要がある。

文書を電子化してペーパーレスにしクラウドに保存する
文書を電子化しクラウドに保存して管理することで、紙媒体を保管するコストを削減できるほか、必要になった際にすぐに検索できるというメリットがある。そのほかにもクラウド上で共有することでテレワークでも検索・閲覧できたり紛失や破損のリスクを避けたりというようなメリットが挙げられる。

電子化できる文書については、運用ルールを構築し積極的にペーパーレス化することで上記以外にもメリットを享受できるだろう。

電子帳簿保存法の改正による保管書類の電子化への規制緩和

電子帳簿保存法とは、帳簿や決算書などの保管書類を一定のルールを満たした上で電子化して保存することを認める法律だ。電子帳簿保存法は度々改正されており、保管書類の電子化への規制緩和が進んでいる。

保管書類の電子化によるメリットは上で述べた通りなので、法律を理解しシステムの導入や管理体制を構築し、積極的に電子化を促進してみてはいかがだろうか。また、電子帳簿保存法やe-文書法に関する詳しい解説は下記記事を参考にしてほしい。
書類を効率よく電子化してe-文書法・改正電子帳簿保存法に対応する方法を解説

まとめ

ビジネス文書は法律で定められた通りに、年単位で保管しておかなければならないため、収納スペースの確保や適切な分類が必要になる。ただし、昨今では法改正によって書類の電子化の規制が緩和されてきているので、要件を満たしている書類については積極的に電子化を取り入れてみてほしい。