オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

2022年10月の育児休業中の社会保険料免除要件見直しに伴う変更内容と影響を解説 

2022.08.04
オフィスのミカタ編集部

育児休業制度における「社会保険料免除の要件」が変更となり、2022年10月に施行される。今回の変更では社会保険料の控除の仕組みが複雑化するため、しっかりと内容を把握できるよう分かりやすく解説する。

育児休業中の社会保険料免除要件の変更箇所

今回の変更箇所は2つ。不公平感が生じていた制度の抜けを補完する目的で改正されることとなった。それぞれ解説する。

月末日またぎで不公平が生じていた免除要件が変更される
男性の育児休業の利用では、短期間であることが多い。その際に改正前の要件では月頭に取得して月半ばに終了してしまう場合、社会保険料が免除されないという不便な点があった。今回の改正で、月末を含まなくても免除が可能となり、よりフレキシブルな取得が可能となる。

賞与月の保険料免除要件の変更
改正前は賞与月に短期間でも育児休業等を取得していた場合、賞与に係る保険料が免除されていた。今回の改正では育児休業を1ヶ月以上取得した人に限って賞与にかかる保険料が免除されるという要件に変更された。

今回の変更は、男性の育休取得者が増加してきたことにより発生した問題に対処するためのもの。そこで、育休取得経験者の男性による実態調査の結果を発表した記事を紹介する。ぜひ参考に読んでみてほしい。
【改正|育児休業法】男性育休が促進されたらどう過ごす?パートナーと一緒に「産後ケア施設」滞在に賛成

制度を悪用するケースが増えたことによる要件の変更

今回の改正は制度を悪用するケースが増加したことに対応するためだ。どういった悪用があったのか、どう対策するのか解説する。

社会保険料免除を目的に育休を取得するケースが増加
前述したとおり、男性の育児休業は、短期間であることが多い。改正前は月末に取得していれば要件を満たしているとみなされる形だったこともあり、月末だけ取得して社会保険料免除を狙うといったケースが増えていた。例えば、ボーナス月が7月の会社であれば、7月31日のみ育児休業を取得すると、7月の給与と賞与の保険料が免除されるという抜け道が発生する。

不公平感をなくすために今回の用件見直しが実施される
今回の改正により、上記で示したような悪用ができなくなる。悪用が多発することは、育児休業取得者に対する周囲からの不信感を生み、正しく制度を利用している人にとって不公平となっていた。今回の改正により、不公平感がなくなり、悪用できないようになるだろう。

産休と育休における保険料免除の対象者と期間

改正に関して知識をアップデートすることは大事だが、そもそもの産前産後休業期間(産休)と育休(育児休業等期間中)の保険料免除対象者について自信を持って把握していると言える人は多くないのではないだろうか。ここでは基本に返って保険料免除の条件についておさらいする。

産休は出産を予定している人全員が対象となる
産休とは、出産を予定している人全員が対象となる制度で、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日がその期間とされている。この間の健康保険、厚生年金保険の保険料は被保険者の産休中に、事業主が年金事務所に申し出ることで両方の負担が免除される。

1年以上継続雇用者という要件が2022年4月から撤廃された育休
2022年4月からは雇用形態にかかわらず、取得要件が緩和されており、改正前は1年以上継続雇用されている者となっていた要件も撤廃された。

育児休業延長を申請して保険料免除を受けるには
通常、育休は子どもが1歳に達するまで取得できるが、所定の条件を満たせば延長が可能だ。延長申請には1歳6カ月と2歳の2種類あり、延長には要件がある。

【1歳6カ月(2歳)まで延長する際の要件】
・育児休業の対象の子どもが1歳(1歳6カ月)になる誕生日の前日までに、従業員または配偶者が育児休業を取得している状態にある
・対象の子どもが保育所に入所できないなど、1歳(1歳6カ月)を超えても休業が必要と認められる場合

上記要件を満たす場合、延長開始の2週間前までに申請書を提出して事業主に申請することで保険料の免除を受けることができる。

産休から復職までに発生する労務手続きのスケジュール

会社に産休に入る社員がいる場合の復帰までの労務手続きについて、順に説明する。

産休の申請があった時点で行うべき労務の手続き
産休の取得申請があった場合、まずは「産前産後休業取得者申出書」を提出してもらう。さらに確認すべき事項は以下のとおりだ。

・休業中の連絡先
・出産予定日
・最終出社予定日
・育休取得の有無
・復職の予定日
・出産手当金や出産育児一時金の申請について

住民税に関しては、産休中に免除することができないため、どういった方法で徴収するのかを取り決めておきたい。方法としては
1 会社で立て替えておき、復職後に徴収
2 休業前の給与から一括徴収
3 普通徴収に切り替える
の3つになる。

また、休業期間中の通勤手当の返却を依頼することも忘れないようにしたい。

産休に入る前、出産後に行う手続き
産休前に記入してもらった「産前産後休業取得者申出書」に関して、窓口か郵送、電子申請によって事業主が年金事務所などに申請する。
「出産手当金」「出産育児一時金」に関しては本人か事業主のどちらかが手続きするため、事前に取り決めていた方法で手続きを進める。産休取得者が子どもの戸籍を取得後、健康保険への扶養追加は迅速に行いたい。

育児休業に関する労務の手続き
育児休業が開始したら、社会保険料の免除の手続きと育児休業給付金の受給申請を行う。社会保険料の免除手続きは年金事務所や健康保険組合に所定の書類を提出しよう。育休給付金の受給手続きは、ハローワークに書類を提出する。こちらは2カ月ごとに申請が必要となる。

育休終了予定日前に復職する場合、「育児休業終了届」「育児休業等終了時報酬月額変更届・厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」の2つを年金事務所と健康保険組合に提出する。

まとめ

産休・育休は働く人の権利。取得した社員に対する不当な扱いは法律で禁止されていることを、常に念頭に置いてほしい。会社として法に触れることがないよう、社会保険料免除の手続きは迅速に進めてほしい。