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仮払消費税とは?仕訳方法や納税までの流れなどをまとめて解説!

2022.10.30
オフィスのミカタ編集部

仮払消費税とは、仕入れ・経費などにかかる消費税のことを言う。消費税の経理処理は複雑なため、処理方法を詳しく知りたい担当者も多いのではないだろうか。本記事では、仮払消費税の概要や、仕訳方法、また仮受消費税との違いなどを解説する。消費税の仕訳についての理解を深める際に役立ててほしい。

目次

●仮払消費とは?
●仮払消費税の仕訳例
●消費税の計算における「簡易課税」
●まとめ

仮払消費税とは?

まずは、仮払消費税の概要を見ていこう。

仮払消費税は「税抜経理方式」を用いる場合に使用する勘定科目
仮払消費税は、仕入れや経費などの代金にかかる「消費税分」の仕訳の際に用いる勘定科目のことだ。仮払消費税は、消費税を税抜方式で経理処理している場合に利用するもので、商品の仕入れ時に商品の代金と消費税額を分けて仕訳し、支払った消費税額を「仮払消費税」として計上する。その場合、決算時には「仮受消費税」と相殺し、差額を「未払消費税等」で計上し、消費税額の算出が必要だ。

そもそも、「税抜経理方式」と「税込経理方式」とは
消費税の経理処理には「税込経理方式」のほかに「税抜経理方式」がある。前述のように、税抜経理方式では商品の代金と消費税額を分けて仕訳を行うが、税込経理方式では、両者合わせて仕訳を行う。どちらの処理方式を選択するかは、企業の任意選択となっているため、まずは自社がどちらの方式を採用しているかを確認しよう。

・税抜経理方式:本体価格と消費税を分けて計上する方式
・税込経理方式:本体価格と消費税の合計金額で計上する方式

「仮受消費税」との関係
「仮払消費税」と似た言葉に「仮受消費税」がある。仮払消費税は、仕入れなどで商品やサービスを購入した際に「支払った消費税」を指すのに対し、「仮受消費税」は、売上などの代金にかかる消費税を指し、顧客などから「預かる消費税」を意味する。似た言葉であるものの、異なる意味を持つため注意しておこう。

「仮払消費税」と「仮受消費税」の差額が納税すべき消費税額
決算時には1年分の「仮払消費税」と「仮受消費税」をそれぞれ合計した金額の差額が、消費税納税額のベースである「未払消費税」(納税すべき消費税額)となる。例えば1年分の仮払消費税が30,000円で、仮受消費税が50,000円の場合、決算時の仕訳は下記の通りになる。


(借方)仮受消費税  50,000円  / (貸方)仮払消費税 30,000円
                      未払消費税等 20,000円


仮払消費税が発生しない取引も
企業におけるあらゆる取引は「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」の3つに分けられる。課税取引に該当する場合は消費税額の仕訳が必要になるが、非課税取引や不課税取引ではその必要がない。まずは取引が以下の3つのどの取引に該当するのかを見極めることが必要だ。

<課税取引>
課税取引とは、消費税が課される取引のことを指す。そもそも消費税とは、モノやサービスなどの「消費」に課される税金だ。企業で行われる取引は主に「課税取引」に該当することを覚えておこう。

<非課税取引>
非課税取引とは、社会的な配慮などから消費税が非課税となっている取引を指す。非課税取引となるものについては、国税庁のHPで確認できる。非課税取引となる代表的なものは下記の通りだ。

・土地の譲渡及び貸付
・有価証券等の譲渡
・支払手段の譲渡
・預貯金の利子
・保険料を対価とする役務の提供等
・日本郵便株式会社等などが行う郵便切手類の譲渡
・印紙の売渡し場所における印紙の譲渡
・地方公共団体などが行う証紙の譲渡
・商品券やプリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
・国等が行う一定の事務にかかる役務の提供
・外国為替業務にかかる役務の提供
・社会保険医療の給付等
・介No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例|国税庁護保険サービスの提供
・社会福祉事業等によるサービスの提供
・医師や助産師などによる助産に関するサービスの提供
・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
・一定の身体障がい者用物品の譲渡や貸付け
・一定の要件を満たす学校の授業料や入学金等
・教科用図書の譲渡
・住宅の貸付け

(参考:国税庁『No.6201 非課税となる取引』

<不課税取引>
不課税取引とは、消費税の対象外となる取引を言う。具体的には、借入金などがある。借入金は、借りたお金を返済するだけの行為であり、モノやサービスの「消費」は行われていないと考えられるため、不課税取引に該当する。他にも、不課税取引の対象となるもがあるため、詳しくは国税庁のHPで確認しよう。

・給与、賃金
・附金、祝金、見舞金、国または地方公共団体からの補助金や助成金等
・無償による試供品や見本品の提供
・保険金や共済金
・株式の配当金やその他の出資分配金
・資産について廃棄をしたり、盗難や滅失があった場合
・心身または資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償

(参考:国税庁『No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例』

仮払消費税の仕訳例

ここでは仮払消費税の仕訳を具体例に沿ってみていこう。

商品を掛けで仕入れた時の仕訳
30万円の商品(消費税3万円)を掛けで仕入れた場合。

(借方)   仕入 300,000円  / (貸方)買掛金 330,000円
    仮払消費税 30,000円


備品などを現金で購入した際の仕訳
5万円の備品(消費税5,000円)代金を現金で支払った場合。

 (借方)消耗品費 50,000円 /(貸方)現金 55,000円
     仮払消費税 5,000円                

商品を返品した際の仕訳
1万円の商品(消費税1,000円)を仕入れたが、不備があり返品した場合。

(借方)買掛金 11,000円 /(貸方)仕入 10,000円
               仮払消費税 1,000円  

消費税が還付される際の仕訳
決算時に「仮払消費税」100万円、「仮受消費税」90万円の相殺処理で、消費税10万円を未収計上した場合。

(借方)仮受消費税 900,000円 /(貸方)仮払消費税 1,000,000円
   未収消費税等 100,000円

消費税の計算における「簡易課税」

消費税を納める際は、預かった消費税と支払った消費税の差額を計算し納付税額を計算するのが原則だ。しかし、消費税は電話代や備品、営業車などあらゆる経費に含まれているため、支払った消費税の総額を計算するのは、非常に大変な作業となる。そのため、中小企業に対しては、消費税を簡便に計算する特例である「簡易課税」が認められている。

簡易課税は、業種別に預かった消費税額に一定の率(みなし仕入れ率)を掛けた金額を支払った消費税とみなし計算する方法だ。中小企業の担当者は、経理処理の業務負担軽減のためにも、簡易課税制度を活用することをおすすめする。簡易課税制度については、国税庁のウェブサイトに詳しく記載されているため、確認してみるとよいだろう。

(参考:国税庁『No.6509 簡易課税制度の事業区分』

まとめ

仮払消費税は「支払った消費税額」を指す勘定科目であり、消費税の経理処理を「税抜経理方式」を採用している場合に使用するものだ。決算時には、期首から期末までの間の「仮払消費税」と、売上などから受け取った「仮受消費税」を相殺し、納税額を算出する必要がある。ただし、企業間取引において、消費税が発生する取引と、発生しない取引があることも覚えておきたい。本記事を参考に、消費税の仕組みを理解し、正確な納税ができるよう知識を深めていってほしい。