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採用広報とは?進め方やメディア戦略の手法、企業の取り組み事例を紹介

2022.12.03
オフィスのミカタ編集部

採用を目的に企業自らが情報発信を行う採用広報。求職者に向けて自社が求める人材をアピールできるため、採用後のミスマッチを減らすなどさまざまなメリットがある。働き方および情報発信メディアの多様化により、現在注目が集まっている採用方法の一つだ。今回の記事では、採用広報とは何かや進め方、メディア戦略における手法と合わせて、実際に取り組む企業例を3つ紹介する。

目次

●採用広報とは?
●採用広報を取り入れるには
●採用広報のメディア戦略における手法
●採用広報に取り組んでいる3つの企業事例
●まとめ

採用広報とは?

採用広報とは、「採用を目的として、企業自らが情報発信を行う広報活動」を指す。ホームページや広告において、文字や写真、動画などを介して自社をPRする活動といえる。転職活動を積極的に行う「転職顕在層」のみならず、転職の意欲はあるが具体的な転職活動を行っていない「転職潜在層」へのアプローチができるため、自社の応募数を増加させる母集団形成につながるだろう。また、企業と採用者のミスマッチを低減させることにも効果的だ。

採用広報が注目される背景
昨今、フリーランスやリモートワークといった働き方の多様化が進んでいる。職場環境や同僚との価値観、昇進の有無など、「企業に対して求めるもの」は人によって細分化かつ条件化されており、選択基準はより複雑になった。また、SNSの大衆化など情報メディアの発達により、求職者に広報するための手段も増えている。

そのため、自社が求める人材を確保するには、これまでのように応募を待つ採用手法ではなく、人材を獲得しにいく「採用広報」が注目されているといえる。

採用広報を取り入れるには

実際に、採用広報を導入するには、どのように進めるとよいのだろうか。4つのステップを紹介する。

ステップ1.採用ターゲットの決定
はじめに、採用ターゲットを決めよう。広範囲への発信は求職者に響きづらいため、採用したい人物のペルソナ像の設定や、そのための採用基準を明確化する。このときに、なるべく詳細に定義を行うことで、発信内容や媒体などの選択がしやすくなるだろう。

ステップ2.発信する内容の決定
続いて、発信する内容を決めていく。事業や仕事の内容はもちろん、企業の制度や文化、社員の働き方・考え方など、目的やターゲットに沿った発信内容を考えよう。求職者が求める情報をより明確にするには、新入社員や中途入社経験のある社員に、当時知りたかった情報や入社の決め手となったポイントを尋ねるとよい。

ステップ3.発信する方法の決定
次に、採用広報を掲載する媒体を決める。メディア掲載の方法は数種類存在するため、目的やターゲット層によってマッチする方法は異なる。より目的・ターゲットに効果的と予測される媒体を選ぼう。

また、採用広報は継続的な取り組みが不可欠だ。人的コストを考慮した上で、運用や管理が容易な媒体選びも大切といえる。

ステップ4.KPIの設定
最後に、採用広報のKPI(重要業績評価指標)を設定しよう。採用広報の成果は数値化できないため、効果を実感するまでに時間がかかる。そこで、応募者数や入社後の定着率など採用活動全体を見る「長期的なKPI」と、広報記事のPV数やSNSの表示回数といったメディアから見る「短期的KPI」の設定が望ましい。短期的KPIの設置は、定期的なコンテンツ見直しと、長期的KPIへのモチベーション維持に効果的だろう。

採用広報のメディア戦略における手法

採用広報のメディア戦略には、「PESOモデル」といわれる4つの手法がある。PESOとは、ペイドメディア(Paid Media)、アーンドメディア(Earned Media)、シェアードメディア(Shared Media)、オウンドメディア(Owned Media)の頭文字をとった総称だ。それぞれの役割やメリットを見てみよう。

1.ペイドメディア
ペイドメディアとは、テレビCMや新聞、Web上のバナーなど広告枠を購入して情報発信する手法を指す。有料の求人広告もこれに含まれる。人目に付きやすいこの手法は、情報を広くかつ速く拡散できるため、認知度拡大や採用ページへの誘導機会創出に効果的だ。求人に特化したペイドメディアの場合、特定のターゲットに向けた広告表示も可能なため、短期的・一時的な求人にもよいだろう。

2.アーンドメディア
アーンドメディアとは、口コミサイトなど個々のユーザーが起点となって情報交換や交流ができるメディアを利用して情報を伝える手法だ。具体的には、新聞やテレビ、Webなどの取材・インタビュー、まとめサイトなどによる紹介・レビューなど、料金が発生しないプレスリリースや他社メディアでの情報発信を指す。公的または第三者からの情報掲載により、公平性や信頼性につながるといえる。

3.シェアードメディア
シェアードメディアとは、TwitterやInstagramなどSNSや個人ブログでの発信、リアルな場での口コミによって情報を伝える手法のことだ。これまでアーンドメディアに含まれていたが、SNSの大衆化と情報発信源の違いから、近年は分けて考えられるようになった。情報掲載に料金は発生せず、個人同士のやり取りがメインだ。そのため共感が得られやすく、情報の拡散につながるとして現在注目を集めるメディア戦略だ。

4.オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社でメディアを立ち上げ情報発信する手法だ。制限やフォーマットがないため、採用に関する情報を細かく伝えられる。具体的には、写真や動画と合わせて実際に働く社員のインタビューや社内イベントの様子など、自社の魅力や文化を具体的なエピソードとともに掲載することだ。また、常に最新かつ正確な情報が得られるという信頼性があるため、求職者の決め手になりやすい戦略ともいえる。オウンドメディアの活用により、自社ブランディングや長期的な採用につながるだけでなく、採用ノウハウを貯蓄できるのも魅力の一つだ。

採用広報に取り組んでいる3つの企業事例

実際に採用広報を導入している企業では、どのメディア戦略を取り入れているのだろうか。企業事例を3つ紹介する。

株式会社ユーティル
企業のDX支援を展開する株式会社ユーティルでは、求職者と企業のマッチングSNS「Wantedly」を利用した採用広報を行っている。写真付きの社員インタビューは、会社の雰囲気や働く人の様子など求職者の知りたい「リアルな情報」を伝えるコンテンツとなっている。

Wantedlyはエンジニアやマーケティング、デザイナー等IT人材の登録者が多く、ユーザーの年齢層は20~30代の若手が中心。給料や待遇といった条件ではなく、「やりがいや環境」で企業と求職者をマッチングしている、新たなビジネスSNSだ。自社のターゲットとなる人材が目にする機会の多いメディアを活用している点も参考にしたい。
参考:(株式会社ユーティル- Wantedly)

本田技研工業(Honda)
本田技研工業(以下、Honda)は、2020年にオウンドメディア「Me and Honda,Career」を立ち上げている。同サイトの特徴は、Hondaで働く「個」に焦点を当てていること。Hondaで働くことの魅力ややりがいを一人ひとりのストーリーとして伝えて、Hondaで働くことに興味を持ってもらうのが狙いだ。
参考:(Me and Honda, Career)

株式会社メルカリ
フリマアプリを展開する株式会社メルカリでは、メルカンというオウンドメディアを運営している。メルカンでは、メルカリ内で働く新入社員やエンジニアなどさまざまな人材・職種に分けたコンテンツだけでなく、社内の制度や取り組み、拠点ごとの情報も配信。すると、転職潜在層へのアプローチに成功したという。ターゲット層が求める価値観や惹かれる情報を的確に捉え、企業のビジョンを伝え続けていることが採用広報の成果につながったといえるだろう。
参考:(メルカン)

まとめ

採用広報とは、人材獲得を目的に企業自らが採用に関する情報発信をすることで、現在注目されている採用手法だ。自社の採用における課題を踏まえた上で、目的やターゲットを捉え、発信内容の決定やKPIの設定を進めていくとよいだろう。メディア戦略にはさまざまな方法があるため、自社の目的・ターゲットに合った発信方法を選択することで、より効果的な戦略となる。実際に採用広報を取り入れている企業事例をもとに、自社に導入してみてはいかがだろうか。