「新電力会社」事業撤退動向調査(2023年6月)撤退ピークアウト
帝国データバンクが「新電力会社」事業撤退動向調査の結果を発表した。電力自由化の流れを受けてスタートした電力小売会社(新電力会社)は、資材価格やエネルギー高、電力卸市場の高騰で一時逆ザヤ状態となるなど経営危機にさらされている。安定した顧客確保が必要な新電力会社は、引き続き電力卸市場の価格変動の影響にどのように対応するのか、先行きが注目される。
調査概要
調査対象:2021年4月までに登録のあった新電力会社706社
対象期間:6月29日時点
調査機関:帝国データバンク
「契約停止」 企業の27.7%が「再開」へ
2021年4月時点で登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、2023年6月25日時点で「電力事業の契約停止(新規申し込み停止を含む)や撤退、倒産や廃業」が判明したのは180社(構成比25.5%)となり、3月時点の195社から15社(7.7%)減少した。3月時点で「契約停止」となっていた112社のうち31社(同27.7%)がサービスを再開(一部再開を含む)したことで、「契約停止」企業が減少した。
停止・撤退等となった180社の態様を分類すると、最も多いのは「契約停止」の87社(構成比48.3%、3月比22.3%減)で、次いで電力販売事業からの「撤退」は64社(同35.6%、同12.3%増)、「倒産・廃業」は29社(同16.1%、同11.5%増)となった。
約3割の企業が「値上げ」の動き
事業を継続している613社の動向をみると、198社(構成比32.3%)が「値上げ」の動きを取っていることがわかった。
198社のうち、143社(同72.2%)が2023年に入ってから「料金の改定・変更・見直し」を発表した。このほか、55社(同27.8%)が、実質値上げと捉えられる「燃料費調整金」(市場価格が変動した際に電気代に反映できるものとして利用されている)の導入、不特定多数に対して大量の取引を行う際の取引条項を定める約款の変更や改訂、料金プランの変更などをホームページで記載していた。「料金の改定・変更・見直し」を公表した企業は、託送料金や規制料金の引き上げ、広く電力高騰の厳しい市況などを主な理由としていた。
なお、電力高騰以降、2022年末以前に価格を見直している企業もあり、実際にはさらに多くの新電力会社が価格改定に動いていたとみられる。
まとめ
2023 年度の夏季電力需給は、10 年に1度の猛暑を想定した電力需要に対し、全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を上回っている。しかし、東京エリアは7月が厳しい見通しとなっており、電力卸市場で大きな変動が生じれば、再び「電力難民」企業が増える可能性もあり、各社の対応が注目される。