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2月の「物価高」倒産は57件で2カ月連続の増加に 負債総額は10カ月連続で100億円超|2024年2月 「物価高」倒産状況

2024.03.11

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年2月の「物価高」を起因とした倒産が57件(前年同月比39.0%増)で、前年同月の41件の約1.4倍に増加したと発表した。負債総額は187億8800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回ったが、10カ月連続で100億円以上が続く。TSRは円安などを背景とした財・サービスなどの価格上昇が、財務体質がぜい弱な企業にのしかかっているとの見方を示した。

7割の企業でコスト増加

7割の企業でコスト増加

今年2月にTSRが実施した「価格転嫁に関するアンケート」調査では、今年1月の本業に係るコストが前年1月より「増加した」と回答した企業は73.6%。また、コスト上昇分を「価格転嫁できていない」と回答した企業のうち「原材料や燃料費、電気代の高騰」をあげた企業は37.9%を占めている。

TSRは今年4月、コロナ禍の資金繰り支援のゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎えることに注目。コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務に陥った企業は多く、そうした企業は物価高への耐性が乏しい。さらに人材確保のための賃上げなどのコスト上昇も見込まれることから、TSRは収益悪化による資金繰りへの影響が懸念点であると指摘した。

※本調査は、2024年2月の企業倒産(負債1000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析したもの。

出典元:企業の 7割で「原材料価格」、「人件費」などコスト上昇 人件費増加分は「転嫁できていない」がほぼ半数(TSRデータインサイト)

2月の「物価高」倒産は57件、負債総額は187億8800万円

2月の「物価高」倒産は57件、負債総額は187億8800万円

TSRによると、2024年2月の「物価高」倒産は57件(前年同月比39.0%増)で、2カ月連続で前年同月を上回っている。負債総額は187億8800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。しかし、負債総額は2023年5月より10カ月連続で100億円超の推移が続いている。

外国為替相場は1ドル=150円を挟んでの推移と、依然として円安基調となっている。TSRは、実質賃金が前年同月を下回るなか、生活必需品の値上げが相次ぎ、消費停滞の影響も及ぶとみている。

出典元:2月の「物価高」倒産57件、2カ月連続で増加 負債総額は10カ月連続で100億円を超える(TSRデータインサイト)

産業別・業種別・地区別の分析

産業別・業種別・地区別の分析

【産業別】
最多は、製造業の20件(前年同月比150.0%増、前年同月8件)。次いで、運輸業10件(同66.6%増、同6件)卸売業9件(同12.5%増、同8件)と続き、5産業で前年同月を上回った。

【業種別】
業種別(業種中分類)は、道路貨物運送業が10件(前年同月比66.6%増、前年同月6件)で最多。次いで、食料品製造業が9件(前年同月4件)飲食店が4件(同5件)と続く。

【地区別】
地区別は、中部、北陸を除く7地区で前年同月を上回っており「関東」前年同月比77.7%増(9→16件)「北海道」同66.6%増(3→5件)「東北」「九州」同60.0%増(5→8件)の順となった。都道府県別は、増加が17道府県、減少9県、同件数が21都府県。47都道府県のうち、18県(構成比38.2%)で発生がなかった。最多は、福岡の6件(前年同月2件)。

形態別・負債額別・資本金別の分析

形態別・負債額別・資本金別の分析

【形態別】
形態別は、破産が49件(前年同月比32.4%増)で「物価高」倒産の8割以上(構成比85.9%)を占めた。このほか、取引停止処分が4件(前年同月比33.3%増、前年同月3件)民事再生法が3件(前年同月ゼロ)で、特別清算が前年同月と同件数の1件だった。

【負債額別】
負債額別は、最多が1億円以上5億円未満の24件(前年同月比33.3%増、前年同月18件)。次いで、5千万円以上1億円未満の14件(同55.5%増、同9件)1千万円以上5千万円未満の10件(同11.1%増、同9件)と続く。なお「1億円以上」「5億円以上」「10億円以上」の合計が33件(前年同月比43.4%増)で、全体の約6割(構成比57.8%)を占めている。

【資本金別】
資本金別は、1千万円未満が32件(前年同月比60.0%増)で、構成比は5割超(56.1%)を占めた。1千万円以上は25件(同19.0%増)。

まとめ

「物価高」を起因とした倒産の増加傾向が続いている。2024年2月の負債総額は2カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、10カ月連続で100億円超となった。7割を超える企業が前年比較してコストが増加していることも明らかになっており、価格転嫁ができていない企業も少なくない。

日本商工会議所は、中小企業などの持続的な成長の実現には、上昇するコストの適切な価格転嫁が不可欠であるとして、中小企業・小規模事業者向けの「価格交渉ハンドブック」を公開している。価格転嫁がスムーズに行えていない企業は参考にしていただきたい。

参考:価格交渉・価格転嫁のススメ ~事業者の価格交渉力強化に向けて~(日本商工会議所)