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中小企業の賃上げ「実施予定」が58.5%「販売価格の値上げ」で原資確保の動き

2024.03.21

採用業務クラウド「採用係長」を提供する株式会社ネットオン(本社:大阪市北区、代表取締役CEO:木嶋諭)は「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の人事・採用担当者を対象に、賃上げに関するアンケート調査を実施した。ここでは調査結果の概要を紹介する。

調査実施の背景

2024年度の春季労使交渉(春闘)が佳境を迎えている。昨今の物価高や人手不足、また脱デフレに向けて、政府は2023年を上回る賃上げを要請。国内主要企業の多くが労使の要求に対して満額、あるいはそれ以上のベースアップや初任給の引き上げを決定した。

3月末にかけては中小企業の労使間交渉が本格化する。賃上げの気運が中小企業へと広がることが期待される中、中小企業は2024年度の賃上げについてどのように対応するのか。

同社は、採用業務クラウド『採用係長』の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、2024年度の賃上げ予定に関するアンケート調査を実施した。

出典元:2024年春闘(日本労働組合総連合会)

調査概要

調査期間 :2024年2月22日~2024年3月7日
調査方法 :インターネット調査
調査対象 :「採用係長」利用事業所の人事・労務担当者
有効回答数:557
※%を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合がある
出典元:中小企業の賃上げ、58.5%が「実施予定」。原資確保の取り組みは「販売価格の値上げ」が最多|<2024年度>中小企業の賃上げ実態調査(株式会社ネットオン/採用係長の採用アカデミー)

賃上げを「実施する」事業所が半数超え

賃上げを「実施する」事業所が半数超え

同社は、はじめに全事業所へ2024年度の賃上げ予定について質問。その結果、58.5%が「実施する予定」と回答したことを明らかにした。同社によると、前回調査(2023年3月実施/n=335)との比較では「実施する予定」の事業所が3.9ポイント増加している。

続いて、賃上げを実施する雇用形態について質問したところ「正規雇用・非正規雇用の両方」と回答した事業所が56.1%を占めた。「正規雇用のみ」と回答した事業所は30%を超えたが、前回調査(33.3%)よりも減少。雇用形態による格差の改善が見られた。

賃上げ内容は「ベースアップ」が54.9%

賃上げ内容は「ベースアップ」が54.9%

賃上げ予定の内容については、半数以上の事業所が「ベースアップ」と回答し、前回調査と比べて3.5ポイントの上昇となった。一方「定期昇給」は8.3ポイント減少している。「ベースアップ」を実施する事業所の割合は、前々回調査(2022年3月)は39.4%、前回調査(2023年)は51.4%、2024年は54.9%となり、3年連続での増加となった。

賃上げ率は「2~3%未満」が最多。約6割が1〜5%未満の範囲で実施する予定としていることがわかった。なお、賃上げ理由の上位は「従業員の生活を支えるため」「定着率向上のため」「人材採用のため」に。「業績が伸びた(回復した)ため」を賃上げ理由とした事業所は、16.9%に留まった。

賃上げを実施しない理由の1位は「現在の賃金が適切であるため」で、62.3%が回答。前回調査から24.8ポイント上昇している。前回1位の「業績の向上(回復)が見込まれていないため」は、28.4%減少して2位に順位を下げた。3位の「物価高や円安によるコスト増加のため」は、21.6ポイント減少。4位の「社会保険料の増加により会社の負担が増えるため」は、11.1ポイントの減少で、賃上げを実施しない事業所については、前回調査時と異なる状況であることがうかがえる結果となった。

原資の確保は「販売価格の値上げ」が最多

原資の確保は「販売価格の値上げ」が最多

同社は、賃上げを「実施する予定」と回答した事業所(n=326)へ、賃上げの原資確保に向けて実施する(した)取り組みについて質問。最も多かったのは「販売価格の値上げ」であったと報告した。

また「取り組みはないが賃上げに踏み切った」と回答した事業所が25.8%で、それ以外の75.2%は何らかの取り組みを行っていることがわかっている。

同社はこの結果を受けて、賃上げを実施する事業所の多くが価格転嫁や生産性の向上に努めており、今回の賃上げはその成果であるとの考察を示した。

まとめ

今回の調査では、中小企業において賃上げを「実施する予定」と回答した事業所が58.5%となり、1年前(2023年3月)に実施した前回調査から3.9ポイント上昇したことがわかった。

賃上げの理由として「業績が伸びた(回復した)ため」とした事業所は16.9%に留まっており、厳しい経営状況の中での賃上げであることがわかる。そうした中で、原資確保に向けて「販売価格の値上げ」など、何らかの取り組みを行う企業が7割を超えており、中小企業に賃上げに対する前向きな姿勢があると読み取れる。

同社はこうした結果に対し「経営努力はもちろんですが、賃上げに活用できる施策の情報収集、積極的に活用するための体制整備も賃上げを進めるうえでは重要といえるのではないでしょうか」とコメントした。

政府は中小企業の賃上げを支援するために、補助金や税制優遇制度の創設・拡充を予定している。その中のひとつ、中堅・中小成長投資補助金は、3月6日から1次公募を開始しており、4月末まで受付中だ。条件に当てはまるのであれば、活用も検討してみてはいかがだろうか。

参考:物価高を上回る所得増へ(内閣官房内閣広報室)
参考:中堅・中小成長投資補助金(経済産業省)