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部門間の関係性が社内コミュニケーションの課題トップ【HR総研「社内コミュニケーション」に関する調査レポート】

2024.03.25

人事のプロを支援するポータルサイト「HRプロ」を運営するProFuture株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長CEO:寺澤康介)の研究機関であるHR総研が「社内コミュニケーション」に関する調査を行った。社内コミュニケーションの手段の一つとして、オンラインツールにも慣れたものの、対面よりコミュニケーションの難しさを感じるとともに「社内コミュニケーションの活性化がどれだけ組織改革や企業としての生産性向上に繋がっているのか分かりづらい」などの課題を持っている企業も少なくないとの考えから実施されたもの。社内コミュニケーションの実態を明らかにし、コミュニケーション活性化のために効果がある施策等を紹介した。ここでは調査結果の概要についてお伝えする。

調査概要

アンケート名称:【HR総研】「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年2月2日~9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・ご担当者様
有効回答:285件
出典元:HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート 結果報告(ProFuture株式会社)

社内コミュニケーションの課題や影響

社内コミュニケーションの課題や影響

本調査ではまず、自社において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか」について確認。その結果、53%が「大いにそう思う」として圧倒的に多く、次いで「ややそう思う」が33%で、合わせると9割近くの企業において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と捉えていることがわかった。

続いて、自社の社内コミュニケーションに関する課題について、どのように認識しているかを確認。企業規模別にみると「大いにあると思う」と「ややあると思う」を合計した「課題がある」(以下同じ)の割合は、従業員数1001名以上の大企業では70%、301~1000名の中堅企業では67%、300名以下の中小企業では60%で、いずれの企業規模でも6割以上が自社に課題があると認識していることがわかる。一方「あまりないと思う」と「全くないと思う」を合計した「課題がない」(以下同じ)の割合は、企業規模に関わらず1割程度にとどまった。

また、社内コミュニケーションの課題感別に従業員エンゲージメントの状態を見ると、社内コミュニケーションに「課題がない」企業群では従業員エンゲージメントが「非常に高い」(9%)と「やや高い」(41%)を合計した「高い」の割合が50%と半数に上る。同様に、社内コミュニケーションの課題感が「どちらとも言えない」企業群では32%「課題感がある」企業群では22%と2割にとどまり、逆に「非常に低い」と「やや低い」を合計した「低い」の割合が36%と、「高い」を大きく上回った。

社内コミュニケーション不全の原因

社内コミュニケーション不全の原因

本調査結果によると、業務に支障をきたす社内コミュニケーション不全の原因については、すべての企業規模で「管理職のコミュニケーション力」が最多。大企業から順に41%、43%、41%といずれも4割以上に上った。大企業では、次いで「対面コミュニケーションの減少(35%)」「社員のコミュニケーション力(32%)」などが続いた。中堅・中小企業では、次いで「社員のコミュニケーション力(36%・38%)」「組織風土・社風(31%・34%)」などが続く結果となっている。

HR総研はこの結果について「いずれの企業規模でも、管理職と一般社員それぞれのコミュニケーション力不足により円滑な意思疎通に支障をきたしているとともに、特に大企業においては、コロナ禍以降で業務のオンライン化が進んだことで、これまでは対面での会話で感じ取れた心の機微をオンラインでは表現しづらくなっている。また、会話の頻度自体が減少するなどにより、コミュニケーションに求められる能力も少なからず変化してきている部分もあるだろう」とコメントしている。

社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み

社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み

本調査ではさらに、自社における社内コミュニケーション状況について、一年前からの変化を確認した。その結果 「変化なし」が圧倒的に多く58%で、次いで「やや活性化している」が30%となっている。「活性化している」(「非常に活性化している」と「やや活性化している」の合計、以下同じ)の割合は32%と3割で、一方「悪化している」(「やや悪化している」と「非常に悪化している」の合計、以下同じ)は10%と1割にとどまった。

また、企業規模別に社内コミュニケーション活性化のために実施している取組みの内容を確認すると、いずれの企業規模でも最も多いのは「1on1(個人面談)」で、大企業から順に65%、46%、39%となった。大企業では、次いで「従業員アンケート(61%)」「社内公募制度・社内FA制度(39%)」が続く。中堅企業では「社内報(44%)」「従業員アンケート(41%)」の順、中小企業では「管理職対象のコミュニケーション研修(25%)」「従業員アンケート(21%)」が続いた。

「一年前からの社内コミュニケーションの変化」で示した社内コミュニケーション活性状況別に見てみると「活性化している」企業群では「1on1(個人面談)」が最多で63%。「変化なし」や「悪化している」企業群と20ポイント以上の顕著な差異が見られた。また「従業員アンケート(48%)」「メンター制度(33%)」「社内公募制度・社内FA制度(29%)」も「変化なし」や「悪化している」企業群と比較的顕著な差異があることがわかっている。

まとめ

本調査では「社内コミュニケーションに課題がない」とする企業では、従業員エンゲージメントが高いという結果が出ている。このことから、離職率予防等の観点からも社内コミュニケーションの活性化は重要であると考えられるだろう。

HR総研客員研究員の曽和利光氏は、本調査結果を受けて「日本社会でも徐々に進んでいる価値観の多様化を考えれば、大勢で集まって縦横無尽に話し合うパーティ型よりも、1対1でそれぞれの個性に合わせて対話(ダイアローグ)型のコミュニケーションの方が適しているのであろう。『社内コミュニケーションの活性化』という言葉のイメージから酒席やイベントをイメージしてしまうと、この時代では効果を出すことはできなさそうだ」との分析コメントを寄せた。

時代の変化とともに、社内コミュニケーションの在り方に関しても変化が起きている。そのことを念頭においた上で、自社での施策に問題がないか、改めて見つめ直す機会としていただきたい。