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働き方改革「勤務間インターバル制度の導入」が増加|企業の働き方改革に関する実態調査

2024.03.26

働き方改革コンサルティングを提供する株式会社ワーク・ライフバランス(本社:東京都港区、代表取締役:小室淑恵)は、2024年1月に「第5回働き方改革に関するアンケート」を実施した。本調査は、2019年度より継続しており、働き方改革をより推進していくことを目的に、働き方改革に効果的な施策や課題、新たな環境変化への対応方法といった知恵を探るべく、全国の20代以上のビジネスパーソンを対象に働き方改革の実態について調査したもの。ここでは第5回の結果概要を紹介する。

子どもを産み育てたいと思える労働時間

子どもを産み育てたいと思える労働時間

本調査によると「子どもを産み育てたい(「子どもがすでにいたとしてもさらに持ちたい」を含む)」と思える理想的な労働時間は1日「5時間以上~7時間未満」だった。現行の労働基準法第32条および第40条では、法定労働時間が1週間に40時間以内・1日に8時間以内と定められているが、同社は本調査結果から、少子化対策を考えると基準となる法定労働時間のさらなる短縮や時間外労働に対する割増賃金率の増加が求められると推測した。

同社によると、労働時間を短くすればするほどよい、というわけではなく、理想の労働時間が「5時間未満」であった場合、追加で欲しい子どもの数は比較的少なく、子どもをさらに欲しいと思えるためには、適度な労働時間(により必要な収入を自力で得られる自信を持てること)が求められていると推測できる。

同社はフランスで週の労働時間が35時間に短縮された結果、出生率が大幅に伸びた事例を挙げ、時間外労働に対する割増賃金率を上げて労働時間の抑制をする対処法が考えられると提言した。

管理職への意欲に必要なのは「適切な評価」

管理職への意欲に必要なのは「適切な評価」

本調査結果をみると「管理職になりたいと思えるようになるために必要と考えるもの」の30代以下の女性における1位は「労働時間が1日6時間程度」となっている。すべての性別・年代での1位は「適切な評価がある(女性:53.6%、男性:57.4%)」だった。昨今注目される女性活躍推進では、適切な評価があることに加え、適切な労働時間で働くことが昇進意欲に関係することが示唆された。

同社は、幼児の子育て期を過ごす30代以下で、特に家事育児時間の多い傾向がある女性においては、長時間労働が管理職になる大きなハードルであると考察。昨今注目される女性活躍推進には、適切な評価があることに加え、適切な労働時間が影響を持つ可能性が高いとした。

一方、30代以下の男性においては「労働時間が1日6時間程度」よりも「適切な評価がある」の割合が大きく、管理職になるための労働時間に対しての課題感は女性に比べて小さいようだ。同社はその背景に、女性へ家事・育児の負担がのしかかっていると考察した。

離職率低下に効果的な取り組み

離職率低下に効果的な取り組み

本調査において、離職率が低下した企業が実践していた取り組みで最も多かったのは「各部署で今後の働き方に関する議論の時間の設定(43.6%)」だった。次いで「情報共有の仕組みづくり(40.0%)」が続いており、働き方改革の議論が職場で行われていることや属人化の防止が離職につながることが示唆された。
同社は、離職につながるような「働きづらさ」は個人だけで解決できる原因であることは少なく、職場の合意を得て仕事の進め方を改善できることで解決すると考察。従来から続いてきた慣習による仕事の進め方を見直す議論を進めている企業ほど職場が改善できている、あるいは将来的に改善の見通しがたっており希望が持てるため、離職が低下しているとの見方を示した。

また同社は、働き方に関する議論を行うことで、仕事も家庭も両立して満足して働ける可能性が高くなり「採用応募人数の増加」「生産性向上による余剰時間の創出」にもつながることから、人手不足への対応の一歩として、離職者を減らす取り組みから始めることが重要だと解説している。

働き方改革「勤務間インターバル制度の導入」が増加

働き方改革「勤務間インターバル制度の導入」が増加

本調査によると、2023年度内に取り組んだ働き方改革の内容の中で、昨年度から最も増加した取り組みは「勤務間インターバル制度の導入(24.5%、昨年比+7.2%)」で、最も減少した取り組みは「時間単位有給など有給取得の取得強化(19.0%、昨年比-6.1%)」となっている。最も多い取り組みは「社員のスキルアップ等を目的とした研修の充実(33.5%、昨年比+0.9%)」だった。

2019年4月の労働基準法改正により、勤務終了から次の勤務開始まで一定の休息時間を設ける、勤務間インターバル制度の導入が企業の「努力義務」に。この法律には「5年後見直し」の規定があることから、5年後である2024年が勤務間インターバル制度についてさらに検討が進むことが考えられ、各企業がそれを先取りして導入に動いていることが分かる。
 
最も減少幅が大きかった「時間単位有給など有給取得の取得強化(19.0%、昨年比-6.1%)」について同社は、既にこれまでも多くの企業で進められており、取得率が高まってきている可能性があると推察した。

採用に効果があるのは休息の保証と業務集中の予防

採用に効果があるのは休息の保証と業務集中の予防

本調査では、採用がスムーズになった企業が実践していた取り組みについても集計。最も多かった取り組みは「勤務間インターバル制度の導入」と「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」(それぞれ同じく38.1%)だった。

「勤務間インターバル制度の導入」に関して同社は、過度な残業がなく休息を確保できる企業であることを入社の前に確認できることが、応募者にとっては重要な要素になっていると考察した。

また「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」については、有休取得や、男性の育児休業取得がしやすい環境になることから、全社的な働きやすさを実現し、採用時にPRできているとの見方を示した。

なお、採用において効果が高いと考えられる「基本給、賞与アップ」(17.6%)はワースト2位であり、トップの「勤務間インターバル制度の導入」と「情報共有の仕組みづくり」に対して2倍以上の差が開いている。

業績向上のポイントは部門間連携

業績向上のポイントは部門間連携

続いて本調査では、業績が向上した企業で実践していた取り組みを集計。最も多かったのは「部門間連携を強化する取り組み(45.1%)」で、次いで「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり(42.9%)」が続いた。「残業削減に向けた数値目標の設置(26.6%)」「不要な業務の削除(24.5%)」「ノー残業デーや定時退社の促進(24.0%)」といった残業「時間」を短期的に減らそうとする取組は、業績向上に結びつかないことが示唆された。

同社は、職場における課題の中でも根本的な課題は部署外に存在していることが多々あり、部署の枠を超えてその課題解決に取り組むことで、業績向上につながると分析している。

また「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり(42.9%)」が2位となっており、属人化の解消のための行動が業績の向上にもつながっている可能性が示唆された。

2024年に取り組む予定が多いのは「残業削減」

2024年に取り組む予定が多いのは「残業削減」

本調査によると、2024年に取り組む予定の施策または取り組みたいと思う施策の1位は「残業削減(27.0%、昨年比-2.8%)」だった。同社は本調査結果から、短期的な成果のみを求めることは却って成果を生み出せなくなる可能性があると指摘し、より具体的な施策と合わせて推進していくことを推奨した。

また、昨年度からの増加率が大きかったのは「時間単位取得可能な有給制度の導入(19.4%、昨年比+4.6%)」「インターバル制度の導入(14.6%、昨年比+3.9%)」「男性の育児休業の取得・促進(23.4%、昨年比+3.0%)」であり、さらに仕事と家庭の両立を図りたいという労働者側の望みがうかがえる結果となった。

同社は「男性の育児休業の取得・促進」について、国の調査で取得割合が年々高まっていることや、厚生労働省が今後、従業員が100人超の企業に男性の育児休業取得率について目標値設定と公表を義務付ける方針であることから、さらに注目を集めると予測した。

調査概要

調査名:株式会社ワーク・ライフバランス/第5回働き方改革に関する実態調査(2023年度)
調査対象:インターネットリサーチモニター 年齢:20歳~70歳 性別:男女 居住地:全国
調査期間:2023年1月30日~2024年1月31日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:有効回答数:事前調査 6310件、本調査1143件
※回答率(%)は小数点第1位を四捨五入して表示しているため、合計数値は必ずしも100%とはならない場合がある
出典元:【プレスリリース】企業の働き方改革に関する実態調査(2023年版)(株式会社ワーク・ライフバランス)

まとめ

本調査によって、働き方改革の実態、採用や業績向上に効果的な施策などが明らかになった。今後は、インターバル制度の導入や、男性の育児休暇取得促進などに注力していく企業が多いようだ。また、採用と業績向上のどちらにおいても高い効果を示した「特定の人への業務集中を防ぐための情報共有の仕組みづくり」にも注目したい。

厚生労働省は、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成している。また、各都道府県労働局には「働き方・休み方改善コンサルタント」を配置しており、無料相談を受け付けている。活用を検討してみてはいかがだろうか。

参考:労働時間等の設定の改善(厚生労働省)