中堅企業「候補企業」は中小企業の7.5% 産業別では建設業が最多に TSR調査
株式会社 東京商工リサーチ(以下:TSR)は、保有する企業データベースから、直近の従業員数・資本金が判明している企業を抽出、分析。産業競争力強化法の一部改正で定義された「中堅企業」の候補となる企業について調査した。政府が「中堅企業元年」と位置付ける2024年を起点に、中堅企業への本格支援の広がりが国内企業の活性化につながるか注目されている。
中小企業の成長意欲促進で経済の好循環に
政府は産業競争力強化法を一部改正(2024年9月2日に施行)。従業員数2000人以下で中小企業を除く企業を「中堅企業」と位置付け、支援策を講じることが発表されている。具体的には成長投資への補助金や賃上げ促進税制などへ中堅企業枠を創設するという。政府は中堅企業について、国内での事業・投資を拡大し、賃上げや雇用拡大などを通じ、国内や地域の経済に好循環をもたらすことを期待しているようだ。
TSRは、企業が資本金や従業員数を抑えて中小企業に留まることで支援を受けてきた従来の動きは、企業の成長を滞らせ、生産性や収益性の低迷につながる側面があったと指摘。今回の法改正が中小企業の成長意欲を促し、中堅企業へのステップアップの契機になることが期待されると解説している。
※参考:政府による「中堅企業成長促進パッケージ」
中堅企業「候補企業」は7万7614社
TSRは直近1年間で中堅企業に仲間入りした中小企業の従業員増加率を基準として、候補企業を選定。その結果、TSRの企業データベースにおいて、2024年7月末で中堅企業に該当する企業は9169社で、このうち294社が中小企業(2023年7月時点)だった
続いて、294社の5年前(2018年)と2023年の従業員数を比較し、中小企業基本法に基づいて4業種ごとに従業員増加率の平均値(基準増加率)を算出。2024年7月時点のTSRの企業データベースに登録されている中小企業(102万5060社)のうち、5年前(2019年)からの従業員増加率が基準増加率を上回る7万7614社が候補企業に該当することがわかった。
産業別の候補企業数は「建設業:2万5849社(構成比33.3%)」「卸売業:1万5655社(同20.1%)」「サービス業他:1万83社(同12.9%)」が上位に。最少は「金融・保険業:764社(同0.9%)」だったことも報告されている。
産業別の中小企業に占める「候補企業」率は、卸売業の13.3%が唯一の1割超えで最高となっている。そのほか全体平均の7.5%を上回ったのは「農・林・漁・鉱業:9.6%」「金融・保険業:9.0%」「建設業:8.5%」であった。卸売業については、候補企業の選定基準とした基準増加率が23.5%で、全体の87.4%より63.9ポイント低く、中堅企業予備軍に該当した割合が他業種より高くなったという。
出典元:中堅企業「候補企業」全国に7万7,614社 中小企業の7.5%が該当、将来の成長に期待(東京商工リサーチ)
まとめ
経済産業省は地域の中堅・中核企業のさらなる成長支援のため、新規事業展開等を支援する地域・テーマごとの支援プラットフォームを全国各地に立ち上げた。特設サイトでは各地の支援プログラムやイベント・セミナー情報が随時掲載されている。
地域経済の牽引役として期待が寄せられる中堅企業。支援策等の充実で候補企業となる7万社以上の中小企業の成長意欲をどれだけ高められるか、今後の動向にも注目したいところだ。
参考:中堅・中核企業支援プラットフォーム(経済産業省)