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「努力が報われない社会」に向かっている? 自己責任論が根強い日本の貧困に対し、今あなたができること

2019.05.22
正木 伸城(まさき のぶしろ)

経済学者ピケティの理路で「努力しないから貧しくなる」を吹き飛ばす

 日本の貧困問題について社会的成功者(と見なされていそうな人)たちに意見を伺った。彼らの多くが「貧しいのは本人の努力不足ゆえ」という見解をもっていて正直びっくりした。市場の動向にすばやくキャッチアップすることを大事にしている人たちが、市場に確かな位置を占める「貧困層」について理解をもっていないのである。あるいは彼らの言う「市場」に貧困層はふくまれないのだろうか。だとしたら、ことは深刻というほかない。

 わたしはボクシング漫画『はじめの一歩』の言葉を思いだした。
 「努力した者が全て報われるとは限らん」
 「しかし! 成功した者は皆すべからく努力しておる」(*1)
 ボクシングジム会長の言だ。この言葉にふれた当時、わたしは高校生だったけれど、これには得心がいった。「世のなか報われない努力はある」とわたしも感じていたからだ。
 あれから約20年。いま貧困層にとっての「努力が報われる=(たとえば)経済的な上昇をとげる」確率は、きびしいほどに低くなった。

 数年前の「ピケティブーム」はご記憶の方も多いと思う。経済学者ピケティの『21世紀の資本』がベストセラーになった。社会的成功者たちも、多くがピケティに群がった。しかし、ピケティが世に問うたことが彼らにピンとこなかった可能性がある。なので、ここでかんたんに解説する。

 『21世紀の資本』で「r>g」という不等式が有名になった。詳細は省くが、この式は、「成長率が低い経済のなかでは、『労働』から得られる所得よりも『保有する富』が生みだす所得のほうが大きくなる」ことを示している(*2)。

 表現がむずかしかったかもしれない。
 誤解を恐れず要言しよう。
 つまりピケティは、「汗水ながして働いて得られるお金よりも、資産家が資産運用等で得るお金のほうがはるかに多くなっていく社会」が今まさにあって、しかも「金持ちはより金持ちに、貧乏はより貧乏になりやすい環境が刻々と生まれている。その原因が資本主義なのだ。資本主義はそのようにできている」と分析的にのべた。

 貧乏人が努力しても、金持ちとの格差は基本、広がる。
 金持ちの子は金持ちに、貧乏人の子は貧乏になっていく。

 この結論は「努力や能力の差が、経済格差にあらわれる」という新自由主義者が好む理路を吹き飛ばす威力をもっていた。

「貧しい人にチャンスがこない社会になっている」(政治学者パットナム)

 しかし、社会的成功者たちは反論するかもしれない。「もちろん報われない努力もあるけれど、成り上がりのチャンスを活かせば富者になれる可能性はある。チャンスを活用する努力はすべきではないか。要は、努力の『しどころ』の問題だ」と。

 ところが、ピケティのすぐあとに政治学者パットナムがこの見方を粉砕した。パットナムはアメリカを例にとり、「貧しい人たちは教育や就労の場を選べなく...

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