DX推進の必須スキル、バックオフィスマーケティングとは?
前回のコラムでは、オフィスへ出社しなくてはいけない原因となってしまっている郵便物を解決する郵便物DXについてご紹介しました。
今回は、私の連載も折り返し地点にきたので、中間まとめとしてバックオフィスの方が知っておくべきバックオフィスマーケティングを解説した特別号となっております。
なぜ、DXを推進する際にバックオフィスの方にもマーケティングを理解していただく必要があるのか、バックオフィスマーケティングとは何なのかについて詳説していきます。
DX推進するために一番必要な知識は、マーケティングである。
突然ですが、マーケティングとは何でしょうか? 私がセミナーをしている時に質問すると、市場調査、ターゲティング、プロモーション、商品企画、販売、ブランディングなど見事にバラバラな答えが返ってきます。にも関わらずマーケティングという言葉を頻繁に聞きます。
私はこのようにバラバラの意味合いで使っているのに、なんとなくその言葉を使ってしまっていることを”言葉の1人歩き”と言っています。
皆さんの中で定義がバラバラで全貌を掴むのが難しいのがマーケティングではないでしょうか。
実は、マーケティングの定義は団体や学者によってバラバラです。しかも時代に合わせて定義が変わるという不思議な性質を持っています。
数学であればある日突然数式が変わったら困りますよね?でも、マーケティング業界では変えることが自然なのです。何が市場における価値になるかは時代の流れによって変わるので、定義も変わる。それがマーケティングの醍醐味です。
私もある日から自分なりの定義を持ち年々この定義を見直しています。現在の定義は、マーケティングとは、”価値を創造し、拡散する一連のプロセス。”としています。つまり価値を創造し拡散するために必要な全てのプロセスがマーケティングに含まれることになります。この感覚が分かってもらえるとマーケティングに関する解像度が上がってくると思います。
さて、一見すると関係ないような話をしましたが、なぜ、DX推進するためにマーケティングが必要なのか。
その答えはDXの最終フェーズの目的は、デジタル技術を通じて新たな価値を生み出すことにあります。
その価値を生み出すアプローチ自体がマーケティングであり、他の学問では説明ができないのです。このDXに最も重要な知識を、バックオフィスの方も身につける必要があるのは、必然となってきます。
1枚の画像でマーケティングのプロセスを全て説明します。
マーケティングには3つのフェーズが存在します。価値を見定めるフェーズ、価値を具体化するフェーズ、価値を具現化し拡散するフェーズがあります。
価値を見定めるフェーズは、いわゆるプロダクトアウト(自分達の持っているものできることから)やマーケットイン(顧客の顕在化されている満たされていないニーズから)。もしくは、コンセプトアウト(顧客に提案し潜在化されているニーズを探る)。いづれかの手段で顧客のニーズを満たしているが競合では提供できず自分達だけが価値提供できるバリュープロポジションを見つけるのが最も重要です。
価値が見つけ出せたら、次は価値を具体化するフェーズです。この際にはセグメンテーションを4つの区分(人口統計的区分、地理的区分、心理的区分、行動的区分)から行って分解し、分解したセグメントの中から最も価値が刺さる層にターゲティングをし、そのターゲットに対して自社のプロダクトは競合とどのような価値の差別化ポイントがあるのかをポジショニングとして定めます。
次に、定めた内容を、言葉とキービジュアルにしてビジュアルハンマーを作ることができたら具体化フェーズは完了です。
そして、価値を具体化した後は、価値を具現化し拡散する最終フェーズに入っていきます。
プロダクトやサービスを、4P(Product,Price,Place,Promotion)、7P(Product,Price,Place,Promotion,Personnel,Process,Physical Evidence)、4C(Co-creation,Currency,Communal activation,Conversation)といったテンプレートにそって実現方法を決めていきます。
また、定めた実現方法を拡散させるために5Aフレームワーク(①認知(AWARE)、②訴求(APPEAL)、③調査(ASK)、④行動(ACT)、⑤推奨(ADVOCATE))を意識してユーザーにどのように認知をしてもらい最終的に推奨を促すかというカスタマージャーニーマップを決めることができたら価値を具現化し拡散するフェーズも完了です。これら価値を見定め、具体化し、具現化し拡散する全てのプロセスがモダンマーケティングには必要となっていきます。
このプロセスが理解できたら、もうあなたは立派なマーケターです。
バックオフィスマーケティングの実践
最後に、覚えたてのマーケティングを実際の業務に落としこんでいきましょう。バックオフィスマーケティングの場合は顧客が従業員となります。
なお、バックオフィスマーケティングの定義としては、従業員向けにバックオフィスの領域で価値を創造し、拡散する一連の活動のこととします。
では、実際にやってみましょう。まず、価値を見定めるフェーズです。バックオフィスマーケティングの場合は、マーケットインから始めるのが良いでしょう。過去にコラムでお伝えしてきた名もなき仕事から選んでいただくも良し、既に従業員から出ている不満を埋めるのもいいと思います。
次に、価値を具体化するフェーズです。やってしまいがちなこととして全従業員向けに価値を届けようとする。これはバックオフィスマーケティング特有の課題ですが、全員にとって価値があるなんていう幻想は捨てていただき、セグメンテーション4区分を参考に様々な切り口でセグメント化しターゲティングしてみてください。ちなみに、セグメンテーション/ターゲティングをしないということはこういうことと同じです。
全従業員の皆さんに向けた施策です。ところが、人口統計的区分だけでセグメント化しターゲティングすると 30代前半の男性社員の皆さんへ向けた施策です。さらに、地理的区分を加えると渋谷オフィスで勤務されている30代前半の男性社員の皆さんへ向けた施策です。
最後に、心理的区分、行動的区分を加えると、週に1度も30分以上の運動ができておらず、自身の健康不安を抱えていて渋谷オフィスで勤務されている30代前半の男性社員の皆さんへ向けた施策です。
さーどうでしょうか。セグメンテーション/ターゲティングをすることで誰に向けた施策であるかということが明確になり価値を実感していただける確率がグーンと上がります。
そして、既にやっている手段や代替手段と比較してどんな差別化ポイントがあるのか心の位置付けをポジショニングし、定めた内容の言葉とキービジュアルを作ってみてビジュアルハンマーを作ってみてください。
ビジュアルハンマーは、誰に対してのどんな価値かをビジュアルと言葉一言で伝える手法なので、ポスターやバナーを作ることをお勧めします。
最後は、価値を具現化し拡散する最終フェーズです。4P,7P,4Cのテンプレートをうまく活用して、どうやったら価値をターゲット層に対して最大化できるか決めていってください。決めることができた後は、5Aフレームワークに従って施策の浸透をどのように図るのかを決めていき、実現していきましょう。
今回のコラムでは、特別編としてバックオフィスマーケティングについて解説をしました。マーケティングの魔力に魅了され、1人でも多くの方が実際にやってみようと前を向いてもらえれば幸いです。
引き続き今後のコラムでは、どんな手段があるか、それぞれ手段を進めていく際にどんなことに気をつけなくてはいけないかといったことについて触れていきます。
リクエストなどあれば、私がやっているビジネスコンシェルジュツールMamoru Bizや認証サービスのMamoru PUSHに問い合わせいただければと思います。