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「働き方改革」につながるエンゲージメント経営とは

2019.04.11

 近年、経営の分野で用いられる言葉としてエンゲージメントが話題となっている。エンゲージメントはもともと、マーケティングなどの分野で使われているものであり、企業経営にとっては無関係と思われていたものだ。

 しかし今、エンゲージメント経営と呼ばれる新しい経営の形ができつつある。そのため、ここではエンゲージメント経営がどういったものであり、どのようにして働き方改革に影響を与えるものなのかを解説していく。

エンゲージメント経営の概要

 エンゲージメントは、約束や契約を表す言葉であり、マーケティング用語としては企業や商品などに対してユーザーが興味や関心を表すものとして用いられている。

 エンゲージメント経営は、経営手法にエンゲージメントの考え方を取り入れたものだ。その意味合いは企業と従業員が相互に影響しあうことによって、きずなを深めながらともに成長していくことにある。

その上で、企業におけるエンゲージメント経営は、会社経営側の手法によって、
・社員が企業に対して期待することを行えているのか
・仕事を行うにあたって、愛着や思い入れなどの絆があるのか
・仕事内容に対する幸福度は高いのか
などの観点から従業員と会社の新しい関係を築くものだ。

 従来の経営では、社員の幸福度よりもコストの削減や教育などによる効率化を図ることが重要視され、個人の意思や意欲は大きく反映されることはなかった。

 加えて言えば、気持ちが追いつかない状態で就労を行うことも可能であり、会社によっては従業員の満足度が著しく低いといったこともあり得るだろう。

 しかし、エンゲージメント経営においては、従来の経営とは全く異なる考え方が必要となってくる。例えば、会社側で行う満足度の調査や人材の確保などにおける報酬などは、会社側からの一方的な関係でしかなかった。

 その上で、エンゲージメント経営では、企業で働く従業員に対して一方的な関係や命令ではなく、あくまでも対等な立ち位置から、労働環境や就労条件等を見直すことが可能だ。

 加えて言えば、従業員と企業の関係が対等になることによって優秀な人材の保護や生産性の向上などの効果をねらうことが可能だ。

企業とエンゲージメント

企業とエンゲージメント

 従来の企業のあり方は、エンゲージメントとはかけ離れた姿だった。例えば、従業員満足度などは一方的に企業側から投げかけられる問いに過ぎず、そこからは従業員の意志ややる気は見えない。

 上司や人間関係及び労働環境によって、従業員満足度さえもまともに測ることができないといった環境も少なくはなかった。

 企業の業績は、従業員満足度が幾ら高くても伸びるとは限らない。加えて言えば、従業員満足度は、企業の相対的な評価ではなく、企業側が用意した一方的な意見に過ぎない。

 エンゲージメントによって、会社の実情を把握することが可能になる。そのため、現状で欠けているものを課題として、改善していくことによって企業の経営を大きく改善することも不可能ではないだろう。

 例えば、給料に対する納得感が低いといった従業員満足度調査結果が出たとしよう。この場合、給料をあげれば従業員満足度が上がるとは限らず、商品などの開発においては、生産性が上がることもない。

 理由としては、給料の意義や価値に対して多くの起業家従業員に対して説明することもないためだ。加えて言えば、会社の業績が伸びたとしても多くの従業員はそれを知ることもほぼないだろう。そのため、このパターンでは、会社の経営陣と従業員の間で既に意志の疎通が出来ていない。
その上で、エンゲージメントを取り入れることによって以下の効果を期待することができる。

・優秀な人材の流出を防ぐ
成果に基づく人物評価は近年では多くの企業が取り入れている。しかし、従業員の成果にかかわらず、一方的な評価であることが非常に多い。その上で、エンゲージメントを取り入れた場合、企業と労働者の関係の改善が見込める。

・従業員の意欲などの向上
エンゲージメントを取り入れ、高めた場合、企業に属する従業員にやる気は飛躍的に向上することになる。また、従業員のパフォーマンスが向上することによってサービスの質にも大きな影響があるため、エンゲージメント経営が取り入れられるようになってきている。

まずはエンゲージメントを測定してみよう

 エンゲージメントの調べ方はいくつか方法がある。例えば、アンケート調査や意識調査などを用いて測ることができるだろう。

経営側として、エンゲージメントを測定するための要素は全部で3つ存在している。

1.エンゲージメント総合指標
従業員が企業に対して、総合的にどのような評価をしているのかを見るためのもの。企業に対する満足度やどのくらい長く勤めたいかなどの内容も含む。

2.エンゲージメントレベル指標
仕事に対する熱意及びやる気を示すもの。自分の仕事の内容に対して、どれほどの価値を見出しているのかなどを評価する。

3.エンゲージメントドライバー指標
従業員エンゲージメントを向上させる要因となるもの。例えば、組織・職務・個人などの要素がどのように影響し合っているかを相対的に表す。

そして、指標の概要を踏まえ、質問が作成される。例えば、質問内容は以下のようになるだろう。

・自分の仕事の価値を知っているか?
・職場に自分を気にかけている人間はいるのか?
・今の環境が自分の成長につながっているのか?
・会社の方針や目的に対して自分の意見は尊重されているのか?

 経営エンゲージメントを行う上では、従業員と企業の間で相対的な理解と把握が必要となる。その上で、企業が従業員に対してどのような価値を提供しているのか、従業員が企業のどこに対して価値を見いだしているのかといった現状把握が大事になると言える。

エンゲージメント経営と働き方改革

 エンゲージ経営を行う上で働き方改革は大きく関わってくる。エンゲージメントを高めるだけでなく、働き方改革関連法案は全ての企業が対応しなければならない法令だからだ。

 では、働き方改革とエンゲージメントの関係性を詳しく見て行こう。どちらも企業側や従業員側の一方的な意見だけでは成り立たない。

 まずは、自社の従業員の状態を認識することから始めよう。例えば、中小企業では、ワークライフバランスが明らかに崩れている従業員が多い。そのような場合であれば、従業員と面談を行い、労働時間の調整や本人の趣向にあわせて業務を任せることが重要だ。

 また、労働時間に関しては、働き方改革でも定義されているように1ヶ月間の残業時間に対して、上限が設定されている。その上限に抵触しないように気をつけるのも、企業側の役目のひとつだ。

 従業員の労働時間の管理に関しては、2019年4月からどの企業でも記録することが義務づけられている。そのため、社内の新しい規則を作っていくこの機会にエンゲージメント経営を取り入れることも可能だ。

 次に、待遇や非正規社員の扱いについても見ていく必要がある。働き方改革などにおいては、非正規社員と正規社員との金額差がなくなる。しかし、金額差がなくなることによってモチベーションや生産性のアップに繋がるとは限らないのが現状だ。

 そのため、従業員のストレスがどこから来ているのかを明確にしておく必要がある。例えば、風通しの悪さや業務に対するフィードバックがないなども従業員にとっては大きなストレスの一因となっていることも多い。

 抱えている職務そのものがその人の適性に合っていないといったことも考えられるため、そういった適材適所な人員配置も企業側に求められてくる。

 加えて言えば、働き方改革においては、雇用者側が経営側に対して待遇等に関して説明する義務がある。そのため、これまで以上に社内での円滑なコミュニケーションや情報共有が必要となってくると言えるだろう。

エンゲージメントを高めると、企業の業績もアップする

エンゲージメントを高めると、企業の業績もアップする

 では、ここでエンゲージメント経営によって業績アップを行った企業について事例を見て行こう。

・小松製作所
小松製作所は、日本の建設機械のシェアにおいて1位、世界でも2位に入るほどの企業だ。そして小松製作所でもエンゲージメント経営を取り入れていた。

 例えば、かつて小松製作所は、グローバル展開を行う段階で「現地の従業員はいくら頑張ってもNo 1になんかなれない」と言われるほど経営思想が偏っていた。

 しかし、エンゲージメント経営を取り入れたことによって、マネジメント層の意識改革や人によるサービス提供の在り方などの教育など、新たな施策によって従業員の不満が消え去り、会社としても業績を伸ばすことができた。

 また、海外企業のApple や PwC などでは、不倫治療費や卵子凍結費用の支給、奨学金返済の補助なども行っていることから、エンゲージメントを強化する動きは世界中の企業で促進されていると言えるだろう。

エンゲージメント経営のこれから

 エンゲージメント経営は、日本の企業でも少しずつ取り入れられてきている。そして、エンゲージメントを取り入れた経営は、従業員と企業との繋がりを強化した上で、大きな業績アップに繋がる可能性がある。

 また、働き方改革などにおいても個人の働き方を尊重した上で法令を守る必要性があるため、これまでよりも一人一人の労働時間や働き方を企業側が把握する必要性があると言えるだろう。

 従来の経営手法では通用しなくなってきている世の中であり、企業と個人が生き残っていくには、コミュニケーションも従来のままでは成り立たない可能性が非常に高い。そのため、働き方改革を意識し、社内改革を進める際にはエンゲージメント経営を取り入れてみることをおすすめする。

 オフィスのミカタでは、エンゲージメントに関するサービス資料をまとめているので、ぜひ参考にしてほしい。

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