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【テレワーク活性化】ワーケーションの費用、会社はどこまで支給すべき?成功事例も紹介

2021.05.21

「新しい働き方」「新しい旅行のスタイル」として、企業や自治体から注目を集めている「ワーケーション」。柔軟な働き方に対する従業員のニーズや、企業の魅力アップなどさまざまな目的から、ワーケーションを導入したいと考える企業もあるだろう。
今回はワーケーションに関する費用の取り扱いや企業・自治体の実施例、ワーケーションに特化した予約サイトや今の時期におすすめのワーケーションスポットを紹介する。

目次

●「ワーケーション」という働き方
●移動+宿泊。どこまでが経費になるのか?
●各企業のワーケーション実例・ワーケーション誘致に成功した自治体事例
●ワーケーション特化のホテル予約サイト
●今月のワーケーションおすすめスポット
●まとめ

「ワーケーション」という働き方

「ワーケーション」とは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」をかけ合わせた造語だ。さまざまなシーンで耳にすることが増えているが、その定義や目的などは曖昧なままという場合も多いのではないだろうか。まずはワーケーションの具体的な内容やメリットを復習しておこう。

ワーケーションとは
「ワーケーション」とは、リゾート地や地方で余暇を楽しみながら、テレワークなどを利用して仕事を行うことの総称だ。ワーケーションには休暇を主体とした「福利厚生型」、業務を主体とした「地域課題解決型」「合宿型」「サテライトオフィス型」など、働き方によっていくつかのパターンがある。詳しくは以下の記事を参照してほしい。
(参照:「仕事と休暇を組み合わせた新しい働き方『ワーケーション』。メリット・デメリットや導入する際の4つのポイント」
(参照:「今月の人事・労務トレンドVol.9 コロナ禍で注目されるワーケーションとは」

ワーケーションのメリット
 ワーケーションは企業・自治体それぞれに以下のメリットがあるとされている。

【企業のメリット】
・柔軟な働き方の実現
・企業の魅力アップ
・年次有給休暇の取得促進
・モチベーション・帰属意識の向上
・リフレッシュ・リラクゼーション効果
・イノベーション・アイデアの創出

【自治体のメリット】
・平日の旅行需要の創出
・関係人口や交流人口の増加による地域創生・地方移住の促進
・事業拡大・雇用の創出
・地域課題の解決
・遊休施設などの有効活用化

働き方改革の一環や新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置として、各省庁ではワーケーションの推進事業や助成事業に取り組んでいる。観光庁では2021年にワーケーションに関するウェブサイトを開設し、情報の公開や企業・地域それぞれに向けたパンフレット作成を行っているので、導入を検討する際は参考にするとよいだろう。

移動+宿泊。どこまでが経費になるのか?

移動+宿泊。どこまでが経費になるのか?

ワーケーションにおける交通費や宿泊費の取り扱いは、旅行の目的や経路、個々の事実関係などによって異なる。ここでは、基本的な考え方とケースごとの対応を見ていこう。

基本的な考え方
「交通費」「宿泊費」「通信費」「施設利用費」を企業と従業員どちらが負担するのかや負担の割合は、企業の取り決めによって異なる。また、観光庁の資料によると、ワーケーションの交通費や宿泊費は、原則「業務の遂行に必要か否か」によって取り扱いが異なるとされている。

以上のことをふまえると、ワーケーションが「業務の遂行に必要」で企業が経費を負担した場合は「旅費」(経費)とし、「業務の遂行に不必要」で企業が経費を負担した場合は「給与」として課税する必要がある。ただし、ワーケーションにはさまざまな形態が想定されるため、個別案件ごとに判断するとされている。

企業と従業員間のトラブルを未然に防ぐためにも、費用負担や取り扱いについては社内規定などに明確に定めておくとよいだろう。次に、ケースごとの例を見てみよう。

【課税対象】旅行(休暇)の合間に業務を行う場合
◆ (例)従業員が2日間の休暇を取得し旅行の空き時間に現地の宿泊施設でテレワークを行う際に、企業が往復の交通費を負担した場合

通常、私的な旅行は「業務を遂行するために必要」とは認められないため、休暇の合間に一部業務を行ったとしても、往復の交通費は従業員が負担するのが妥当と考えられる。往復の交通費を企業が負担した場合、原則としてその従業員に対する給与として課税する必要がある。

研修後に現地で休暇を取得する場合
◆ (例)観光地で2日間の合宿型研修を行った後に従業員が現地で休暇を取得し、企業が研修に関わる往復の交通費を負担した場合

研修後に休暇を取得して観光をする場合であっても、研修に関わる旅行は「業務の遂行に必要」と認められる。そのため、往復の交通費を企業が負担することは合理的だと判断できる。よって、その交通費は「旅費」(経費)として取り扱うものとされ、給与として課税する必要はない。
(参考:国土交通省 観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー 企業向けパンフレット(簡易版)」

各企業のワーケーション実例・ワーケーション誘致に成功した自治体事例

各企業や自治体ではワーケーションに関するさまざまな施策を行っている。各企業の実例や、ワーケーション誘致に成功した自治体事例を紹介する。

❖ 森トラスト株式会社
森トラストグループでは「休暇の充実が仕事の充実につながる」との考えから、2021年3月よりワーケーション制度を試験導入した。グループが運営するホテルを含む、7つのリゾート地9施設でワーケーションを利用できるように。同時に、滞在中の合計勤務時間が一定時間を満たせば、補助を支給するといった制度も設けている。さらに、外部の協力を得てワーケーションが企業や従業員にもたらす効果を、エンゲージメント・メンタルヘルス・睡眠の3つの観点から検証する予定だ。

❖ 株式会社JTB
株式会社JTBは、社内での働き方改革における新たなワークスタイルの提案として、2019年4月よりハワイでのワーケーション制度を導入。社内外の交流促進による自由闊達な風土とイノベーションの創出が目的だ。その後も沖縄の現地事業所や休暇中の滞在先宿泊施設の適用を拡大し、ワークライフバランスによる従業員の働きがいや働きやすさの向上に取り組んでいる。

❖ 日本航空(JAL)
日本航空(JAL)では有給休暇取得を推進する施策の1つとして、2017年7月にワーケーション制度を導入した。この中では、トライアルツアーの企画や、社内イントラネットでの特設ページ開設など、ワーケーションへの理解を深めるための施策を実施。ワーケーションの実施者からは、仕事に対してのストレスや上司との関係性、モチベーションに関してポジティブな意見が寄せられているそうだ。ワーケーションとアクティビティを融合して地域で感性を養うなど、自己成長へつなげる取り組みも企画されている。

❖ ユニリーバ・ジャパン
ユニリーバ・ジャパンでは、2016年に働く場所や時間を社員が自由に選ぶことができる働き方「WAA(ワー)」(Work from Anywhere and Anytime)を導入。その働き方が地域活性や地域創生と親和性の高いことに着目し、2019年7月、WAAにワーケーションを組み込んだ「地域 de WAA」を開始した。2020年12月現在で7つの自治体と連携し、各地域の施設を「コWAAキングスペース」(コワーキングスペース)として社員が利用できる他、業務外の時間で地域のイベントやアクティビティへの参加が可能だ。自治体が指定する、地域課題解決に向けた活動を行うと、定型宿泊施設の宿泊費が無料または割引に。交流をきっかけに商品の開発・販売につながった例もあり、地域と企業双方のメリットが生まれている。
(参考:国土交通省 観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー 企業向けパンフレット」

❖ 和歌山県
和歌山県では全国の自治体に先駆けて2017年度にワーケーションの推進を決定。ホームページ上に県内でのワーケーションの実施例を紹介したり体験プログラムを提供したりと、さまざまな誘致施策や環境整備を進めている。その結果、2017~2019年度の3年間で104社910名がワーケーションを体験。ワーケーションをきっかけとした地域とビジネスのコラボレーションも生まれており、「和歌山県=ワーケーション先進地」とのブランディングを実現している。
(参考:「和歌山ワーケーションプロジェクト」ホームページ

❖ 北海道北見市
北海道北見市は2015年に「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参画。この事業に参加した2社のIT企業が市内にサテライトオフィスを設けワーケーションを継続したことで、北見工業大学との共同研究や新卒者の採用・インターンシップでの連携などにつながっている。自治体には、「企業の技術を活かして地域の課題解決に取り組める」、企業の従業員には、「休日にスキーや観光、グルメを楽しめる」というメリットがあり、企業と地域の密接な関係が醸成されている例と言えるだろう。

❖ 新潟県妙高市
新潟県妙高市は、ワーケーションを単なる「仕事+休暇」や「観光の延長」と捉えず、企業にも参加者にも価値のある内容を提供しようという考えのもと、人材育成プログラムを提供する「ラーニングワーケーション」を目指している。パートナー企業や旅行会社と連携しながら体制を整え、森林ツーリズムやトレイルランニングなど地域の強みを活かしたプログラムを用意して、参加者の満足度につなげているそうだ。
(参考:国土交通省 観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー 受入地域向けパンフレット」

ワーケーション特化のホテル予約サイト

ワーケーション特化のホテル予約サイト

ワーケーションで宿泊施設を探す際には、ワーケーションに特化した検索サービスを利用すると便利だ。ワーケーション特化のホテル予約サイトを2つ紹介する。

❖ Otell
「Otell」は、月曜日から金曜日の4泊5日を19,800円からで利用でき、Wi-Fiや電源、デスク、椅子などの仕事環境か整った宿泊施設のみを検索できる宿泊サイトだ。各宿泊施設ではベッドメイキングやタオル交換などが最小限で行われるため、集中する時間と空間を確保することができる。ホームページ内では利用者の体験記も紹介しているので、参考にするとよいだろう。

❖ Workation Portal
「Workation Portal」は、ワーケーションに特化した宿泊施設の紹介・予約サイトだ。希望のエリアや仕事環境などから利用者のニーズに合った宿泊施設を検索することができる。長期滞在などの要望や予算のリクエストを直接行えることが特徴だ。

今月のワーケーションおすすめスポット

ワーケーションを行う場所を選ぶ際には、自治体の特徴や行えるアクティビティなどを比較・検討するとよいだろう。ここでは、春のワーケーションにおすすめの自治体を紹介する。 

❖ 新緑と野鳥の声に癒される「長野県軽井沢町」
長野県軽井沢町は東京から新幹線で約1時間とアクセスがよく、年間を通して多くの観光客が訪れるリゾート地。駅の近くにアウトレットモールがある他、温泉やアクティビティも多く、ニーズに応じて余暇を楽しむことが可能だ。春には仕事の息抜きに自然の中を散策するのがおすすめ。ツキノワグマやニホンカモシカ、ムササビなどの野生生物が息づく「軽井沢野鳥の森」では、オオルリやキビタキなどの野鳥の声と姿でリラックスできる。

❖ アウトドアを満喫できる「群馬県利根郡みなかみ町」
群馬県利根郡みなかみ町は、ラフティングやレイクカヌーなどのアクティビティや温泉が充実しているため、春のワーケーションにおすすめのスポットだ。2019年には1日1組貸切というコンセプトのワーケーション合宿施設が誕生し、ミーティングやワークショップを行いながらバーベキューなどのアウトドアを楽しむことができる。東京から新幹線で約1時間というアクセスのよさも魅力だ。

まとめ

企業と自治体それぞれにメリットが見込めるワーケーションは、休暇を楽しみながら仕事を行うことのできる柔軟な働き方の1つ。ただし、柔軟性が高いがゆえに制度や経費面での曖昧さという課題があることも事実だ。従業員のモチベーションや生産性向上のためにも、社内の規定をきちんと定めつつ、導入を検討してみてはいかがだろうか。

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