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人生100年時代 健康にはたらくためにVol.3 見えないから今だからこそ気をつけたい、従業員のメンタルケア

2021.05.31

2019年末の発生から未だに収束の目途が立たない新型コロナウイルス感染症。感染拡大防止のために企業はさまざまな対応に追われ、入社後すぐにテレワークを余儀なくされた新入社員もいるだろう。「新しい働き方」が定着しつつある一方で、環境やコミュニケーションに課題が生じ、従業員が不安やストレスを抱えていることも事実だ。

今回の記事では、新しい働き方が定着しつつあるからこそ気をつけたい、従業員のメンタルケアについて解説する。ストレスの背景や原因を把握し、従業員・企業それぞれに必要な対応を探っていこう。

目次

●新型コロナウイルス流行による勤務体系の変化
●急な勤務形態の変化による精神面の負担
●従業員ができる自分自身のケア
●企業ができる従業員の精神面のケア
●まとめ

新型コロナウイルス流行による勤務体系の変化

新型コロナウイルス感染症の猛威は企業にさまざまな影響を及ぼし、働き方や事業の形も変化した。まずは、新型コロナウイルスの感染拡大により変化したことを見ていこう。

就業場所
感染拡大を防止するため、密閉空間・密集場所・密接場面の3条件「3密」を避ける対応が求められるように。2020年4月には全国に緊急事態宣言が発令されたことも相まって、オフィス内の人数や人の移動を制限するために、これまで当たり前だったオフィス出社からテレワークへの転換が急速に行われた。3密を避けつつ柔軟な働き方を実現するための施策・制度として、「ワーケーション」を導入する企業も増えている。

コミュニケーション方法
テレワークの普及や接触機会を避ける目的から、社内外におけるコミュニケーションの方法にも変化があった。ICTツールを利用し、ビジネスチャットやWeb会議を行うことが一般的に。Web会議は移動時間や空間のリソースが不要で「いつでも」「どこでも」会議を行えるため、社内だけでなくクライアントとも効率的な会議の開催が可能となった。

採用イベントや研修
感染防止の観点から、企業説明会や面接などの採用イベント、内定者研修や新人研修もオンライン化が進んだ。地方からの参加のハードルが下がり、多様な人材との接点が生まれやすくなるなど、企業にも求職者にもメリットがある一方で、オンラインに対応した研修内容の検討、動画の準備など、新たな仕組みへの対応も求められるようになっている。

参照: オンライン✕採用イベント 開催方法やメリット・デメリットを詳しく解説
参照: 内定者研修を行う目的とは?コロナ禍での開催のポイント
参照: 今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.8 オンボーディングの進め方とポイント

急な勤務形態の変化による精神面の負担

急な勤務形態の変化による精神面の負担

新型コロナウイルスによる勤務体系の変化は、働く人の心にも大きな影響を与えた。大きな変化による過度なストレスはうつにつながる可能性もあるため、ストレスの原因を知り対策を立てることが大切だ。ここでは、勤務形態の変化による従業員の精神的な負担について解説する。

環境のストレス
 本来生活をするための自宅は、オフィスと異なり、仕事をする環境が十分に整えられているとは言い難いだろう。自宅でテレワークを行う場合、デスクやチェア、モニター、プリンターやスキャナーなどがなく、作業が捗らないといったことが考えられる。家事など他のことが気になってしまい、「オン・オフの切り換えが難しい」「集中しにくい」と感じることもあるようだ。

業務内容・コミュニケーションのストレス 
テレワークでは1人で黙々と業務に打ち込むことが多いため、オフィスでは自然と生まれる会話や相談が生まれにくく、悩んだり孤独感を感じたりすることがあるだろう。メールやチャットで相談をすると工数が増えてしまうため遠慮したり、効率が悪くなることで集中力を欠きモチベーションが低下したりすることもあるようだ。

スキルのストレス
新卒や中途採用の場合、業務に慣れるまでは業務内容への理解やスキルの習得が十分でないことがある。特に採用後すぐにテレワークに入った従業員はその可能性が高く、いつ・誰に相談したらよいのか悩んだり、業務を進めるうえで不安になったりすることにストレスを感じるだろう。

評価のストレス
テレワークでは従業員の業務プロセスを直接確認できないことも多く、実績や成果だけの評価になりがちな点が懸念されている。努力したことや経過など数字で表せない業務が評価されず、成果主義に偏りすぎると、従業員のストレスやモチベーション低下につながる恐れがあるだろう。

なお、テレワークによるうつについては、以下の記事も参照してほしい。
参照: 今、話題の働き方「テレワーク」特集Vol.5 テレワークうつの原因と対策

従業員ができる自分自身のケア

従業員のモチベーション低下を防いだりストレスを軽減したりするためには、従業員自身のケアや息抜きに加え、企業による対策が必要だ。まずは、従業員が自身で行うことのできるメンタルケアを紹介する。

リラックスできることを行う
気持ちを落ち着かせたいときには、心身の緊張を緩めることが大切だ。腹式呼吸などの自席でも簡単に行える手軽なものの他、ストレッチやヨガ、軽い運動をする、音楽を聴く、動画を見るなど、自分にあった方法を見つけるとよい。これらを取り入れることで、オン・オフの切り換えもしやすくなるだろう。

適度な睡眠をとる
睡眠不足は業務効率や集中力の低下につながるため、日頃から適度な睡眠をとることが重要だ。15分程度の昼寝をすることは仕事の効率アップにもつながるとも言われているので、自宅でのテレワークという利点を活かして軽い睡眠をとるのもよいだろう。

身近な人と交流して孤立を避ける
職場の同僚だけでなく友人や知人と話をすることで、気持ちを整理したり解決策が見えたりすることがある。また、笑うことには自律神経のバランスを整えたり免疫力を正常化させたりする効果もあるそうだ。電話やメール、SNSなどを使用してつながりを保ち、1人で抱え込むのを避けることが重要だ。

企業ができる従業員の精神面のケア

企業ができる従業員の精神面のケア

コロナ禍での過度なストレスを防ぐためには、企業による対策や工夫も必要だ。ここでは、企業が行える従業員のメンタルケアを紹介する。

従業員のストレス状態を把握する
2015年の労働安全衛生法の改正により、従業員50人以上の企業には1年以内ごとに1回の「ストレスチェック」の実施が義務付けられている。しかし、「1年に1度しか実施していない」「対象企業に該当しない」「結果の通知までに時間がかかる」などの理由から、従業員のストレスをこまめに把握することが難しい場合もあるだろう。早期に対策をとるためには、サーベイやマネジメント解析ツール、面談などを通じて従業員のストレス度やストレスの内容を早めに把握しよう。

社内体制やルールの見直し
オフィス出社からテレワークへ転換した場合、社内体制やルールを見直すことで従業員の精神的な負担が軽くなることもあるだろう。例として、以下のようなものが挙げられる。

・労務管理や管理体制の見直し(管理ツールの導入、監視型のマネジメントの撤廃など)
・勤務体系や就業時間の見直し(フレックスタイム制やワーケーションの導入など)
・業務体制の見直し(ツールによる業務の可視化、やりがいを感じられる業務へのアサインなど)
・人事評価制度の見直し(360度評価や目標管理制度の導入など)
・在宅勤務手当の導入(備品補助、光熱費の支給など)
・サポート体制の充実(メンター制度・シスター制度の導入など)
・福利厚生の充実(勉強会の実施、食事のサポートなど)

厚生労働省のホームページではメンタルケア対策の取り組み事例なども紹介しているので、参考にするとよいだろう。

参考:厚生労働省「心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
参考:厚生労働省「事業場におけるメンタルヘルス対策の取り組み事例集」

相談窓口を周知する
「誰に相談したらよいかわからない」「直属の上司には相談しにくい」といった場合に備え、相談窓口を明確化し、周知するとよいだろう。「メンター制度などを導入して相談先をつくる」「産業医やカウンセラーに相談できる体制をつくる」「メンタルヘルスに関する相談窓口を設置する」などの方法がある。これらが機能することで、メンタル不調の予防や早期発見につながることが期待されている。

また、厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症によって不安やストレスを抱えている人に向けた相談窓口の開設やリーフレットの作成も行っている。これらについても周知し、従業員の心の負担が少しでも軽くなるような対策をしよう。

参考:厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
参考:厚生労働省「心の悩みにおける相談窓口一覧」
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス流行中のこころの健康維持について」


定期的なコミュニケーションの機会を設定する
対面でのやりとりが少ないテレワーク下では、コミュニケーションの頻度をあげることで「進捗状況を把握しにくい」「業務の優先順位を立てづらい」「顔を合わせないと不安」といったストレスの解消につながる可能性がある。

・Web会議で朝礼を行う
・定期的にチーム内ミーティングや個人面談を設ける
・オンラインランチやコーヒーブレイクの時間を設定する
・業務用・雑談用のチャットグループを作成する
・オンラインサンキューカードなどのサービスを活用する

などの工夫をし、些細な疑問や業務の相談ができる場を提供しよう。頻繁にオンラインでのコミュニケーションを重ねることで業務の見える化や議論の活性化につながり、業務の円滑な遂行が可能となるだろう。

まとめ

 コロナ禍における従業員の心身の不調を予防するためには、背景や原因を知っておくとともに、従業員のストレス状況をこまめに把握する必要がある。社内体制の整備やコミュニケーション機会の増加によって改善につながることもあるため、社内の体制やルールを見直すとともに、適切な対応を検討してみてはいかがだろうか。

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