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市場価値を高めるための経理の仕事内容とキャリア形成のための必要スキルを解説

2022.04.08
オフィスのミカタ編集部

会社を運営する上で欠かせない経理業務。バックオフィス業務の中でも経営に直結する業務であり、関連資格が多いことも特徴といえるだろう。今回は経理業務の仕事内容やスキルアップに役立つ資格の情報などを紹介する。

法人企業における経理の位置づけ・仕事内容

企業内で経理が担う仕事は多岐にわたる。会社ごとに細かな内容は変わるため、ここでは簡潔に説明する。

仕入れ・買掛金と関する書類を管理する
仕入れや買掛金が発生した際の書類を管理し、記帳をするのは経理の仕事。仕入れや買掛金は支払いが発生するため、支払い期日に間に合うように管理する必要がある。

売上げ・売掛金と関する書類を管理する
売上げ・売掛金に関する書類の管理や記帳も、もちろん経理の仕事だ。売上げ・売掛金に関しては取引先からの入金確認までが仕事となる。

現金・預金・小切手と資産の管理をする
小口現金や預金、小切手の管理や、土地や建物、設備、備品などの固定資産の管理も欠かせない。預金口座は複数あることが多く、引き落としのある口座に関しては残高不足にならないように資金移動なども行う必要がある。

手形・経費と負債の管理をする
手形・経費・負債の管理も業務の一つ。手形・経費に関してはその都度対応することが多いため、仕事量に予測がつかない。毎日のルーティーンに余裕を持たせておくことが必要だ。負債に関しては、毎月決まった返済引き落とし日が設定されているため、忘れずに残高を残しておこう。

減価償却など会社資産を現金換算する
会社の決算や財務分析、キャッシュフローに大きく関係する減価償却も忘れてはいけない。会社の資産を適正に管理するためにしっかりと行いたい。

会社の財務状況を月次・年次で可視化する
会社の財務状況を可視化するために月次決算を行うのも経理の重要な役割。さらに、年単位で行う年次決算は、法人に義務付けられた業務なので確実に行う必要がある。特に年次決算前は経理が1年で1番忙しい時期とされ、残業時間も増える傾向にある。

年末調整・社会保険・給与などの計算をする
毎月の給与計算やそれに伴う社会保険の計算は企業によって担当部署が異なるケースがあり、人事部が担っていることもあるが、経理の担当となることもある。年末に全給与所得者に対して、源泉徴収された納税額と、実際に納税すべき金額を計算し、過不足を精算する年末調整も人事部や総務、経理が担当することが多い。

源泉所得税や法人税・所得税の計算や納付のサポートをする
源泉所得税や法人税、所得税の計算については経理が行っているケースが多い。毎年、税率の告知があり変更されることも多いため、改定時期になったら告知をチェックし、いつから新税法が適用になるのか気をつけなければいけない。

経理の仕事の詳細については、下記の記事で詳しく取り上げている。ぜひこちらも一読してみてほしい。
経理とは?業務内容や必要なスキルを紹介

企業規模により経理の仕事内容は異なる

経理と一口に言っても、その仕事の幅には企業規模によって違いがある。企業規模が大きければ大きいほど、担当する仕事は細分化されていくのが一般的だ。ここでは、大企業、中小企業、零細・ベンチャー企業に分けて大まかな仕事内容を紹介する。

大企業 連結決算など高度な決算手続きが必要 専門家との窓口対応など
大企業の場合は、売上高や取引件数などすべての面で規模が大きいため、業務が細分化されていることが一般的だ。財務担当、決算担当など、自分の専門とする業務のみを担当する。そのため、一つの業務に対する高い専門性を身につけることができる。また、上場企業の場合は有価証券報告書や決算短信の書類作成等、決算手続きにも深く関わるため、正確な業務遂行能力や他部署との連携力も問われる。

中小企業 四半期ごとに、財務諸表(PL・CF・BS)の作成など
経営規模がそれほど大きくない場合は一人ひとりのスタッフの業務の幅が広く、様々な経験を積むことができる。また決算に関しては、規模が大きくなりステークホルダーが増えるほど頻度が増えることが多いが、中小企業でも四半期や半期で決算を行い、経営の指標としている企業が多いだろう。

零細企業・ベンチャー 会計基準が厳密ではないため、総務的立ち回りも入る
ベンチャー企業や零細企業では代表者が経理をしていることも多く、業務の割り当てが曖昧なケースが多い。経理業務をする、というよりもバックオフィス全体を担うというイメージで仕事をすると思った方がよいだろう。ありとあらゆるバックオフィス業務の経験を積んでオールラウンダーへと成長できる環境ともいえる。

経理の種類。経理の仕事は管理会計から始まる

経理の仕事には大きく分けて3つの種類がある。それぞれの特徴について解説する。

決算に基づく正しい税額の支払いを目的にした税務会計
企業に課税される所得額を算出するのが税務会計。毎年実施される税制改正に対応しながら、規定に従った方法でできる限り所得を抑えるのが仕事だ。

企業外部への情報開示を目的にした財務会計
財務会計は株主や債権者など、企業外部への情報開示を目的とした会計を指す。財務諸表を用いて利害関係者に財政状態と経営状況を明らかにすることで、今後の企業活動や資金調達をスムーズに進めることができる。

企業内部への情報開示を目的とした管理会計
財務会計とは逆で、企業内部へ経営状態の情報を開示するために行うのが管理会計だ。多くの人がイメージしている経理の仕事は管理会計で、組織内部で活用する情報を扱っている。

経理のキャリアパスの例

経理担当者のキャリアパスは資格を取得して専門に特化した業務を行ったり、独立したりと多彩だ。ここでは4つの例を紹介する。

企業規模が大きい会社での経理業務に就く
大企業の経理担当者の場合は経理職を極め、スペシャリストとして働く道が一般的だろう。上司や先輩から教わった職務経験を後輩へと受け継ぎ、マネジメント経験も積み重ねながら昇進・昇給をしていく。ただ、大企業とはいえ一生安泰とは言い切れないので、常にスキルアップをしてくことは欠かせない。

経営企画など経営数字から経営に携わる
経理は会社の経営状況をもっとも把握している部署だ。社内での立ち位置や経験を生かして数字の面から経営企画に携わるのも道の一つ。細かな数字の流れから、会社を左右する動きを見極めるやりがいのある仕事となるだろう。

ファイナンスのスペシャリストとしてCFOとして企業へ参画する
経理業務の経験を生かして資金調達等に関わる財務職へと転身することで、財務の上位職であるCFOとして経営に参画する道もある。そのためには日頃から自身の担当業務だけでなく広い視野で経理業務をこなしていく必要がある。

士業資格を取得し税理士・会計士事務所で働く
後述する上級資格を取得し、税理士・会計事務所で働くのも一つの手だ。さまざまな企業の財務に関わるため、今までとは違った経験を積むことができる。事務所で勤務したのち、独立開業という道もある。

経理業務には関連する資格が多く、資格取得という目的意識を持ってスキルアップに臨むことができる。オフィスのMIKATAでは、資格やキャリアパスについてのイベント・セミナーを行なっている。オンラインで参加可能なものが多いため、ぜひ気軽に参加してみてほしい。
オフィスのMIKATA イベント・セミナー

経理職のスキルアップ・市場価値向上に関連する上級資格

経理をさらに極めたい、市場価値を高めたいと考えたときに有効となる関連資格は多くあるが、その中でもキャリアアップが狙える上級資格を紹介する。なお、経理といえば簿記の資格のイメージが強いが、簿記はできて当然というのが経理従事者の共通認識のため、今回は紹介していない。

税理士資格
税理士は経理や財務業務への高い専門性を有していることから、高い経理能力を持つとアピールすることができる資格。税理士試験には受験資格があり、要件を満たした者のみが受験できることから、資格保持者は受験資格を満たしていることも証明できる。受験は11科目の中から5科目を選択するが、どれも総合力を問われる難問揃いといわれている。それらを乗り越えた能力の高さも市場価値向上に寄与するだろう。

公認会計士資格
国家資格の中でも弁護士・医師と並んで3大難関資格といわれる公認会計士。公認会計士のみが行える独占業務には監査や、税理士の独占業務である税務がある。

受験資格などはないため、誰でも受けることができるが、「短答式試験」と「論文式試験」の2段階の試験があり、年に2回行われる短答式試験に合格しなければ論文式試験(年1回)には進めない。短答式試験には4科目あり、それぞれ免除制度もあるため上手に活用してほしい。組織内で会計士として働く道のほか、コンサル業務、監査法人で働くなど、活躍の場は広がるだろう。

国際会計検定(BATIC)
BATICは、英語で会計に関する知識を問われる検定試験。日商簿記2級取得者以上でTOEIC750点以上が合格ラインといえる難易度だ。試験はSubject1とSubject2の2つ。1では英文簿記、2では国際会計理論がマークシートと記述式の両方で出題される。グローバル展開を行う企業が増える中で、英語と会計知識を持っていることは大きな強みとなる。経理経験を生かして海外で働くことを視野に入れているならば、ぜひ取得しておきたい。

米国公認会計士(USCPA)
USCPAは、その名の通り米国の公認会計士となるための資格で、米国公認会計士協会が公認しているものだ。日本の公認会計士試験よりも難易度が低いのが特徴の一つ。オーストラリア、カナダ、香港などでは相互承認制度があり、その国の新たな会計士の資格取得の必要がないため、将来海外で働きたいけれど国までは決めていないという人にも嬉しい資格といえるだろう。

大卒以上の学歴が受験資格となっており、試験はPCで解答を入力する。4つの試験科目を18カ月以内に全科目合格すれば資格が取得できる。
海外企業への転職はもちろんのこと、国内の外資系企業や監査法人・会計事務所、コンサル会社など転職の選択肢が増える。

まとめ

ミスがないことが当然とされる経理業務は心理的負担が大きいが、その分他のバックオフィス業務にはない達成感が感じられるのが魅力だろう。キャリアパスを描く上で必要な資格なども分かりやすく存在するため、まずは自身の経理キャリアを今後どうして行きたいのか熟考しよう。そして今回の記事を参考にしながら、理想の道へと進んで行ってほしい。