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インボイス制度による経費精算業務負担の年間人件費は約1兆円?【インボイス制度開始後の経費精算の実態調査】

2024.03.14

出張・経費管理クラウドのリーダーである株式会社コンカー(本社:東京都千代田区、執行役員社長:橋本祥生)は、インボイス制度開始後の経費精算業務の実態調査結果と、インボイス制度の要件緩和に関する提言を発表した。同社の調査によると、インボイス制度の開始により経費管理者、経費申請者の業務負担は増加しており、経費精算業務のデジタル化が後退する恐れがあるという。

株式会社コンカーの提言

株式会社コンカーの提言

インボイス制度開始前はコーポレートカード等のキャッシュレス決済時に明細データが経費精算システムに連携される場合、領収書の受け取りを不要にすることができた。しかし制度開始後、明細データにはインボイス制度に必要な情報が含まれていないため、キャッシュレス決済時であっても適格な領収書の受け取りが原則必須になった(※1)。

同社は、インボイス制度の要件を緩和し、キャッシュレス決済を利用した経費精算の場合は適格な領収書の受け取りを不要にすることを提言した。

※1タクシーアプリなど、一部のキャッシュレス決済サービスでは明細データがインボイス制度に対応しているため、紙の領収書の受け取りは不要
参考:インボイス制度特設サイト(国税庁)

調査結果からみえた課題

調査結果からみえた課題

同社が実施した「インボイス制度開始後の経費精算の実態調査」では、経費管理者の85.4%と経費申請者の69.4%が、キャッシュレス決済の利用によって軽減された経費精算業務の負荷が、インボイス制度開始後に再び増加したと感じていることが明らかになった。

同社はこの結果を受けて、インボイス制度による経費精算業務の負担を年間人件費に換算したところ、約1兆4045億円となり、日本企業の生産性に甚大な影響を及ぼしていると推察した。

インボイス制度による経費精算業務負荷の増加を阻止するためには、キャッシュレス決済時に連携される明細データに、インボイス制度に必要な事業者登録番号等の情報を追加する仕組みを整える必要がある。しかし、経費精算で最も使われているキャッシュレス決済方法であるクレジットカード決済において、明細データに必要情報を追加するためには、全国で約759万(※2)の加盟店の決済端末や、決済ネットワーク、カード会社、国際カードブランドなどの改修が必要であり、膨大なコストと時間を要する現状から、同社は実現は難しいと考察している。

※2 出典元:「2020 年経済構造実態調査」二次集計結果【乙調査編】の結果を取りまとめました(経済産業省)

経費精算業務のデジタル化・効率化の現状復帰に向けて

経費精算業務のデジタル化・効率化の現状復帰に向けて

現在、インボイス制度には出張旅費等特例があり、消費税法の観点では旅費に限り適格な領収書が未受領であっても仕入税額控除対象にすることが可能で、適格な領収書の受け取りを不要にすることができる(※3)。また、法人税法の観点では、キャッシュレス決済であれば領収書は不要だ。
※3 ただし、会社決済型コーポレートカードでの支払い等会社間取引を除く
出典元:出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件

これらの状況を踏まえ同社は出張旅費等特例を、旅費を含む全ての立替経費に拡大し、法人税法と同様にキャッシュレス決済時には適格な領収書を不要にすること、現状では特例の対象外となっている会社決済型コーポレートカードで支払った経費も特例の対象とすることを提言した。

同社はこの提言について、インボイス制度を否定するものではないとして、電子帳簿保存法改正によってインボイス制度開始前には実現していた経費精算業務のデジタル化・効率化の原状復帰を目指すものだとコメント。今後、関係省庁・団体等と協議しながら、日本企業の競争力強化のために、ビジネスパーソンの経費精算業務の負担減少、生産性向上を推進していくとした。

調査概要

調査内容
①経費精算申請者に対する調査
対象:従業員100人以上の企業に所属し、営業職についているビジネスパーソン
サンプル数:500
調査方法/期間:オンライン形式、12月中の1週間
調査実施:ネオマーケティング

②経費管理者に対する調査
対象:CFO協会所属者
サンプル数:500
調査方法/期間:オンライン形式、12月中の1週間
調査実施:CFO協会

調査元:株式会社コンカー

まとめ

2023年からスタートしたインボイス制度による経費精算業務の煩雑化に、負担を感じている担当者は少なくないだろう。同社が試算した数字からも、効率化への対応は急務であると言える。また、こうした提言を受けて国側がどのように対応していくか、今後の動きについても注視しておく必要があるだろう。