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コメ高騰が追い打ちをかけ「弁当店」の倒産が過去最多ペースに TDB調査

2025.06.09

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は「弁当店」の倒産動向について調査・分析を行った。なお本調査における「弁当店」は料理品小売業のうち、事業内容や取扱品目等に弁当類を取り扱っている企業を指し、給食弁当なども含む。

調査概要

集計期間:2000年1月1日~2025年5月31日まで
集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの
出典元:「弁当店」の倒産動向(2025年1-5月)(株式会社帝国データバンク)

「弁当店」の倒産2025年1-5月は22件で年間最多ペースに

「弁当店」の倒産2025年1-5月は22件で年間最多ペースに

TDBの報告によると、2025年1-5月に発生した、駅弁や仕出し弁当を中心とした「弁当店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は2024年の同期間(21件)を上回り、22件となっている。TDBは、このペースが続いた場合について、2025年は前年をさらに上回り、通年で過去最多を更新する可能性があるとの予測を示した。

弁当店においては、会議や法要、冠婚葬祭といった大口の受注や、高単価な弁当のニーズが縮小。さらに、テレワークなどで事業所向けのランチ弁当需要も減少し、法人向けをメインとする仕出し弁当や日替わり弁当などの商圏は縮小傾向が続いているという。

2021年以降は原油高や円安、ウクライナ情勢などにより、鶏肉や食用油、小麦粉など食材価格が高騰し、大きな影響を及ぼしているようだ。また、長時間労働や早朝対応が必要となるため、調理師などの人手不足も深刻化しているという。さらに近時は、食材のなかでも特に「コメ」の高騰が弁当店の経営を大きく圧迫。事業を諦めるケースが目立ち始めたという。

収益力の格差も 二極化が進む損益状況

収益力の格差も 二極化が進む損益状況

TDBはスケールメリットを生かした大手と、地元密着型の「街の弁当店」との間で広がりつつある、収益力の格差に注目。弁当事業を手がける企業の損益状況について、2024年度は45.0%が前年度から「増益」となった一方で、「減益(21.7%)」が2年ぶりに上昇したとの分析結果を報告。また「赤字(30.2%)」は2年連続で低下したものの、赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は51.9%と半数を占めており、二極化が進んでいるという。

特に、中小の弁当店では原価構成に占める食材費の割合が非常に高く、コメ価格の高騰が採算悪化に直結しているようだ。また、スーパーやコンビニなどの「ワンコイン弁当」との競争を背景に、値上げが進まず収益力が低下した弁当店もみられたという。

まとめ

消費者の節約志向も高まっており、採算面で課題を残す中小の弁当店にはより一層厳しい経営環境となっていることが推察される。食材や包装資材の価格上昇分を十分に売価へ転嫁できる状況にない弁当店も少なくないだろう。

弁当店の厳しい経営環境に追い打ちをかけたとみられる「コメ高騰」については、安価な備蓄米の放出が必ずしも解決策にはつながっていない様子もみられるという。TDBによれば、品質維持のために備蓄米を使わないという選択をしている弁当店もあるようだ。

こうした中で、コスト削減や新たな販路の開拓に向けた取り組みはもちろんだが、どのように採算性を確保するかという道筋がたてられなければ、生き残りは厳しいとみられる。高水準で推移する弁当店の倒産動向。今後も注目したい。