国内企業の2025年度業績見通し「増収増益」見込みは急減 TSR調査

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、6月2日~9日「業績予想」「過剰債務」に関するアンケート調査を実施。自社の債務や借入返済について、企業の24.3%が「過剰債務」と回答したことを報告した。
調査概要
調査期間:2025年6月2日~9日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:6602社
出典元:2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減(株式会社東京商工リサーチ)
※本調査では資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
※Q1、Q4は2024年6月3日~10日に同一設問でアンケートを実施(公表日:2024年6月21日)
2025年度の業績「増収増益」は16.6%

本調査ではまずはじめに、2025年度の業績見通しについて質問。その結果「(売上)横這い(利益)横這い(29.4%/前回調査20.9%)」が最も多く、次いで「減収減益(17.0%/同18.1%)」「増収増益(16.6%/同23.3%)」が続いたという。
各回答について集計した結果「増収増益」「増収横ばい」「増収減益」を合わせると「増収」は30.6%(同39.9%)で「売上横這い」は44.5%(同33.1%)「減収」は24.8%(同26.9%)となっている。また「増益(増収増益+横這い増益+減収増益)」は24.8%(同32.7%)で「利益横這い」は42.9%(同34.9%)「減益」は32.1%(同32.3%)と報告された。前回調査との比較を見ると、売上・利益ともに苦戦する企業が目立っている。
増益・減益の理由

なお「増益」と回答した理由については「受注(販売)の伸長が見込まれる(66.6%)」「価格転嫁が進んでいる(38.3%)」「製造・サービス提供の工程や方法の見直しによる効果(12.3%)」などが多く挙げられたようだ。TSRは「価格転嫁が進んでいる」について、大企業は43.0%だったのに対し、中小企業では37.8%にとどまったことを報告。商品の競争力や交渉力に隔たりがあると指摘した。
「減益」と回答した企業からは「受注(販売)が落ち込んでいる(59.0%)」「仕入高騰分の価格転嫁が進まない(43.9%)」「光熱費、燃料価格高騰分の価格転嫁が進まない(37.3%)」「賃上げ分の価格転嫁が十分に進まない(37.1%)」との理由が多く寄せられており、価格転嫁に関する回答が目立つ結果となった。
債務(負債)の状況「過剰感あり」は24.3%

続いてTSRは、負債比率や有利子負債比率など定量数値に限定せず、債務の過剰感について質問。その結果「コロナ前から過剰感(9.2%)」「コロナ後に過剰感(15.0%)」と、合計24.3%が「過剰債務」と回答したことが判明。前回調査(2024年6月)からは1.7ポイント改善したという。
TSRはさらに「過剰感あり(コロナ前から+コロナ後に)」を業種別(業種中分類、回答母数10以上)で分析。最も多かったのは「印刷・同関連業(50.7%)」で、次いで「道路旅客運送業(50.0%)」が続き、2業種が50%以上だったことを報告した。なお「コロナ後に過剰」と回答した企業が最も多かった業種は「道路旅客運送業(42.8%)」だったという。
規模別の分析では、大企業の「過剰感あり」は13.9%だったのに対し、中小企業では25.1%と、10ポイント以上の開きが生じていることもわかった。
まとめ
2025年の業績予想について「増収」「減収」を見込む企業はともに減少し「横這い」と見込む企業の割合が増加している。利益についても同様の傾向がみられており、TSRは「コロナ禍から回復基調にあった国内企業の業況は、早くも踊り場を迎えたと言えそうだ」と指摘する。
人手不足や賃上げ、価格転嫁の難航、円安、利上げなど、企業の利益を圧迫する要因は多岐にわたり、昨今ではトランプ関税による機会損失や費用増も影響していると考えられる。これだけの複合的な要因がある中で、従来の支援策だけでは乗り切ることは難しいだろう。TSRは業績や企業の特性に則した対応の必要性を指摘している。引き続き動向に注目したい。