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【取材記事】時代の変化に揺らがない 組織づくりを考える

2021.08.31

コロナ禍による最初の緊急事態宣言発令から1年余り。国内でのワクチン接種が進められ、職域接種も始まる中で、コロナ収束への期待が高まっている。中でも、出社制限下でのテレワーク運用に困難を感じてきた多くの企業は、元通りの働き方を待ちわびていることだろう。

他方、半ば強制的に導入させられたテレワークの運用を通じて、結果的に恩恵を得た企業もあったのではないだろうか。コロナ対策をきっかけに、これまでなかなか着手できなかった働き方改革をようやく推進できたケースは少なくないはずだ。

求められる対策としての、いわば受動的なテレワークが必須ではなくなりつつある中、各企業の判断で能動的にテレワークという選択肢を取るかが問われている。ウィズ・コロナの時代に向け、改めて自社に合った働き方をどう考えていくべきか。その実現のために、バックオフィスでは何ができるだろうか。freee株式会社 ムーブメント研究所の西村尚久氏に聞いた。

再認識されたBCPの重要性 働き方は"まだら模様"に

「ワクチン接種が進む中、多くの企業が『元の働き方に戻りたい』という想いを強くしています」。中小企業の現状について、西村氏はこう語る。昨年以降のコロナ禍でテレワーク運用を余儀なくされたものの、継続することの難しさを感じている中小企業は少なくない。たとえITツールを導入し、在宅で業務遂行が可能な環境を整えたとしても、業務の仕組みそのものを変えられていなければ、テレワークは機能しないだろう。

「特にバックオフィスでは、押印を要する手続きや紙ベースの業務がまだまだ残っており、出社しなければ業務を行えないという声をよく耳にします。また、テレワークの運用は必ずしも自社だけで完結するものではありません。仮に自社でペーパーレス化、テレワーク化が進んでいたとしても、取引先に紙ベースでの帳票処理や対面でのサービス対応を求められれば、相手に合わせざるを得ないのが実情です。こうした状況において、全員がオフィスに出社する働き方の復活を願う気持ちは、痛いほど理解できます」(西村氏)

しかし、西村氏は、コロナ収束を安易に予測することはできないと考える。今後、ワクチンの接種率が高まってきたとしても、感染者が繰り返し増減する可能性は否定できない。それに伴い、緊急事態宣言が断続的に発令されることも想像に難くないだろう。
また、企業が備えるべきリスクは新型コロナウイルス感染症だけではない。他の感染症や、年々深刻化する自然災害への対策も含めた事業継続計画(BCP)策定の重要性を、コロナ禍を機に再認識した企業も多いのではないだろうか。「単に元通りになるだけでは、本質的な事業継続性の確保は困難でしょう」(西村氏)

そうした事業継続性の強化にあたってポイントになるのは "まだら模様の状況"を前提とした対処だと西村氏。新型コロナを例にあげると、今後、社員全員がワクチンを接種するとは限らない。接種を希望せず、従来の働き方には戻りにくい社員が出てくる可能性も大いにあるだろう。したがって、社員全員に一律の働き方を求めることは難しくなると予想される。「平常時には社員全員がオフィスに出社し、緊急時には100%テレワーク運用すればそれでよい、といった単純な話ではなくなってくると考えた方がよいでしょう。個々の社員の背景がより多様化するこれからの時代に向けた、新たな働き方、そして組織としての在り方を、それぞれの企業が改めて議論する必要があると考えます」(西村氏)

働き方をヒト・モノ・カネ・ 情報から変革する

事業継続性のベースとして、西村氏は、あらゆる変化へ柔軟に対応できる組織づくりをしていくべきだと主張する。変化に強い組織をつくりあげる上で、働き方はどう変わっていくべきなのだろうか。四つの経営資源=ヒト・モノ・カネ・情報のそれぞれの観点から、西村氏は次のように説明する。

まず、「ヒト」については「社員をルールで縛りすぎない働き方、業務の在り方を模索したい」と西村氏。社員が多様な働き方をする中では、固定的なルールの下で一律に業務遂行するのは困難だ。社員一人一人が自律的に考えて行動できるマインド、カルチャーの醸成が重要だという。「freeeでも、社員全員がカルチャーを共有し、自然と一体感を持って業務を行えるよう注力しています。具体的な施策としては、freeeの五つの価値基準をリマインドできるようなイベントを、オンライン、リアル双方で開催しています。各々の自律的なアクションが相乗効果を発揮するような『ムーブメント型チーム』は、社会課題に対するイノベーションも生み出しやすいと考えています」(西村氏)

続いて、「モノ」については「どのような働き方でも円滑に業務を遂行できるように、モノへ積極的に投資する必要がある」と強調する。例えば、テレワーク中にオンライン会議や社内イベントを行う際、社員に貸与しているPCのスペックや、テレワーク環境での通信速度が足りなければ、社員はそうした集まりへ満足に参加できなくなる。その結果、業務遂行に支障が出たり、ひいては社員の一体感を損ねたりする恐れもあるだろう。「現状のモノでできる範囲で変化に対応しようとするのではなく、思い切って必要な投資をするべきだと考えます」(西村氏)。

三つ目の「カネ」については、会計業務やそれに派生する関連業務の見直しについて、特にITツール活用の可能性を探りたいと西村氏は言う。「会計ツール、経費精算ツール、ワークフロー、電子契約サービスなど、お金周りの業務をデジタル化するツールはさまざまあります。オフィスでもテレワーク環境でも変わりなく、効率的に業務を行えるよう、デジタル化による業務標準化を進めたいところです」(西村氏)

最後の「情報」については、新たな働き方に即したセキュリティ対策が欠かせない。とりわけ、情報管理のクラウド化を進めていくべきだと、西村氏は主張する。「情報を引き抜こうとする手口が巧妙化している中、ローカル環境でのデータ保存が安全な時代は終わったと考えた方がよいでしょう。PCをさまざまな場所へ持ち歩く状況では、なおさら危険です。セキュリティの専門家に守られたクラウド環境で情報を管理すれば、安全性を確保できるのはもちろん、一元化することもできるため情報共有の効率化にもつながるはずです」(西村氏)

freeeがハイブリッド型勤務へ移行する理由

これら四つの変化の重要性は、この1年で西村氏自身が感じてきたことでもある。

freeeでは2020年1月ごろから、感染症対策としてのテレワーク運用の準備を始め、同年3月から5月前後までは、ほぼ100%テレワークで業務を行っていた。同社は創業当時からBCPに注力。また、業務効率化の観点から、会計や労務管理といったバックオフィス業務をはじめ、あらゆる業務をクラウド環境で行ってきた。このように事前準備があったため「テレワークへの移行は比較的スムーズだった」と西村氏は振り返る。現在も出社率は10%を維持。業務が滞りなく進んでいるのはもちろん、さらなる業務効率化も実現したという。「例えば営業では、客先へ移動する時間がなくなった分、1日に対応できる商談の件数が約1・4倍に増加しています。その他の業務でも、オフィスにいないことでできなくなった無駄な作業が自然とそぎ落とされたり、コミュニケーションがよりシンプルになったりしている印象です」(西村氏)

一方で、課題も見えてきた。西村氏は「テレワーク運用を始めてから、思い切った方針転換に社員がついていけなくなってきている」と話す。各チームのリーダーとメンバーとの間で認識のズレが生じており、一時はすり合わせをするだけで精一杯。複数のチームで同じ業務を重複して行っていたケースもあるなど、今までにない混乱を経験したという。「オフィスで働いていたときには何気なく行われていた情報共有が、テレワーク環境で一気になくなったことが背景にあるのではないかと分析しています。freeeの場合、経営方針や事業戦略を大きく変えるタイミングでは、一つの場所に集まって働くよう、意識的に仕組みをつくる必要があると痛感しましたね」(西村氏)

こうした問題意識から、今後はオフィス出社(週2回)とテレワーク(週3回)のハイブリッド型勤務体制へ移行したいと話す西村氏。そのために、社員が前向きな気持ちでオフィスに戻ってこられるような仕掛けづくりも考えているという。現に、海外の大手企業などで、出社を求める会社側の決定に従業員が不満を示したというニュースも報じられた。「freeeが大切にしている一体感やムーブメントと、事業継続性を支える新たな働き方のバランスを取るべく、今回明らかになった課題へ対処していきたいと思っています」(西村氏)

クラウド型ツールを活用し 一体感を持った課題解決を

以上のようなfreeeの実践から学べるのは「働き方の課題は、一度解決したらそれで終わりではない」ということだろう。企業を取り巻く状況によって、適した働き方は変化する。オフィスへの出社、テレワーク、ハイブリッド型勤務など、さまざまな働き方に付きまとう課題を、その都度解決していかなければならない。中には、運用してみて初めて見えてくる問題もあるだろう。それらに対処する上で大切なのは「一部門だけで頑張ろうとしないこと」だと西村氏は言う。「特に少人数で業務を行っている中小企業では、社内の課題解決に取り組もうとしている部門に負担が集中してしまいがちです。また、特定の部門が主導して改善を進めようとすると、トップダウンの様相が強くなり、社内の反発を生みやすくなってしまいます。『部門を問わず、社内のみんなで働き方や業務の在り方を変えていこう』というスタンスが成功のカギです」(西村氏)

こうした他部門を巻き込んだ取り組みは、ツールを活用することで容易になる場合も多い。例えば、『freee会計』は、バックオフィスに集中しがちな作業負荷を、社内のさまざまな部門へ少しずつ分散するような設計になっている。経費申請の際には、経費を使った営業担当自身がスマートフォンで領収書などを撮影することで申請。人事労務では、各社員が基礎情報を入力する。「少人数のバックオフィスでも効率的に業務を行えるようになっています。さらに、一連の業務に関わる全員が同じツールを活用する中で『みんなで働き方や業務の課題解決に取り組んでいる』という一体感も生まれるでしょう」(西村氏)

一体感を持って活用できるツールの条件は「クラウド型であること」だと西村氏。クラウド型ツールであれば、複数の社員が同時にシステムへアクセスできるため、作業分担が容易になる。また、場所を問わずアクセスできることから、テレワークを含む多様な働き方とも相性抜群だ。先述したデータ管理の安全性も確保できる。ツールというモノへ投資することで、ヒト(自律的な働き方の促進)、カネ(会計関連業務の効率化)、情報(セキュリティの確保)に変化をもたらせるといえるだろう。
ただし、クラウド型ツールはピンポイントな業務を対象としているものがほとんどだ。会計、人事労務、ワークフローなど、各業務でツールがバラバラに運用されていると、情報を再入力する手間が掛かったり、その過程でミスが生じたりと、むしろ非効率になってしまう恐れもある。そこで、選定にあたっては、統合プラットフォーム型で提供されているサービスや、多様な外部ツールとのAPI連携が可能なツールを選ぶことが重要になる。「こうした開発思想から『freee会計』も、さまざまなバックオフィス業務がシームレスにつながる統合型経営プラットフォームとなっています」(西村氏)

これからの時代の働き方に絶対的な正解はなく、それぞれの企業がヒト・モノ・カネ・情報の課題に取り組みながら、ベストな働き方を模索していかなければならない――そう聞くと、途方に暮れてしまう人もいるかもしれない。しかし、正解がないことや課題があることを、必ずしも悲観する必要はない。「むしろ、組織がより良く変わっていくチャンスとして、ポジティブに捉えるべきだと、私は考えます。『テレワーク中に部下がサボらないだろうか?』『電子契約でトラブルが起こらないだろうか?』など、不安は尽きないと思います。しかし、うまくいくかどうかはやってみなければ分かりません。まずは業務の一部から、少しずつ変えていってもよいでしょう。大切なのは、アウトプット思考で試行錯誤を繰り返すこと。それが、変化を味方に付ける組織づくりの土台になるはずです」(西村氏)

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