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労働保険とは?計算方法や知っておくべきポイント・注意点を紹介

2022.11.04
オフィスのミカタ編集部

業務や通勤によるケガや病気、失業や休業などの収入を保証し、労働者の生活と雇用を守るために作られた「労働保険」。労働保険のしくみを把握することは、自社の従業員への適切な対応にもつながるため、担当者はしっかり把握しておきたい。今回は、労働保険のしくみや注意点、労働保険料の計算方法について解説する。

目次

●労働保険とは?
●労働保険料の計算方法
●労働保険のしくみで知っておきたいこと・注意点
●まとめ

労働保険とは?

労働保険とは、「労働者災害補償保険(労災保険)」と「雇用保険」の総称のこと。労働者の生活や雇用を守ることを目的として作られた国の制度だ。

事業主は、農林水産の一部の事業を除いて業種や事業の規模を問わず、労働者(パートタイマーやアルバイトを含む)を一人でも雇用している場合、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入する義務がある。

参考:厚生労働省『 労働保険とはこのような制度です』

労働保険における「労災保険」
労災保険とは、業務中や通勤中に労働者が負傷・死亡等した場合に、本人やその遺族の生活を守るために必要な保険給付を行うことを目的とした制度のこと。被災した労働者の社会復帰を促すための事業も制度内容の一つだ。

●労災保険の加入対象者
労災保険の加入対象者は労働者だ。基本的に、事業主や自営業主、家族従業者など労働者以外は、労働保険の加入対象にならない。

ただし、中小企業の事業主など労働者と同様の業務に従事することが多い人の場合は、「特別加入制度」が使える。特別加入制度の適用条件を満たせば、たとえ事業主であっても労災保険に加入できることを把握しておくとよいだろう。

参考:厚生労働省『労災補償』
参考:厚生労働省『特別加入制度とは何ですか。』
関連記事:『労災保険とは 加入手続き・給付手続きの流れを紹介』

労働保険における「雇用保険」
雇用保険とは、労働者が失業したり雇用継続が困難になったりした際に、労働者の生活および雇用の安定や就職促進のため、失業給付などの必要な給付を行う制度だ。失業の予防や雇用状態の改善などを図るための事業も行っている。

●雇用保険の加入対象者
雇用保険の加入対象者は、正規雇用者のほか、一定の条件を満たしているパートや派遣社員などの非正規雇用者となる。雇用保険の加入対象になる条件は以下の通り。

・31日以上引き続き雇用されると見込まれるている者であること
・1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること

雇用保険の対象者には、日雇い労働者や季節雇用される短期雇用者なども含まれる。一方、事業主や自営業主とその家族などは加入対象にならない。ただし、労働者として報酬を得ていることが明らかである場合、雇用保険に加入することも可能だ。

参考:厚生労働省『雇用保険制度』
参考:厚生労働省『雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!』
関連記事:『雇用保険の加入条件とは?基本の3要件や正社員・パートごとの詳細を解説』

労働保険料の計算方法

労働保険料は、労働保険対象の従業員の賃金総額に、労働保険料率(労災保険率+雇用保険率)を乗じて計算する。

労働保険料=賃金総額 × 労働保険料率(労災保険率+雇用保険率)

「賃金総額」とは、給与や賞与、各種手当など事業主が労働者に労働の対価として支払う金銭の総額のことだ。また、労働保険料率の内訳である「労災保険率」と「雇用保険率」は、業種の違いにより保険率が細かく分けられている。

ここからは、労働保険料を計算する際に知っておくべき、労災保険料と雇用保険料の事業主・労働者の負担割合や保険率について見ていこう。

なお、具体的な労働保険料の計算例については、こちらが参考になる。
参考:大阪労働局『労働保険料の計算例』
関連記事:『おさえておきたい!バックオフィスの基礎知識 Vol.1 6月は労働保険料の更新月。手続きフローや注意点を詳しく解説』

労災保険料の負担割合と保険率
労災保険料は、全額事業主の負担となる。そのため、労働者の給与からは天引しない。

労災保険料の保険率は業種により異なり、最も低い業種で2.5/1,000、高い業種で88/1,000分となっている。ただし、労災保険率は改定される可能性があるため、実際の保険率は、厚生労働省が公開している「労災保険率表」を確認することが大切だ。

参考:厚生労働省『令和4年度の労災保険率について ~令和3年度から変更ありません~』

雇用保険料の負担割合と保険率
雇用保険料は、労働者と事業主が双方で負担する。

雇用保険料の保険率は、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3区分に分かれており、それぞれ9.5/1,000、11.5/1,000、12.5/1,000となっている。雇用保険料は折半負担ではなく、事業主は労働者負担(失業等給付・育児休業給付の保険料率の1/2)を除いた分を負担することに注意しよう。雇用保険率の労働者負担と事業主負担の詳しい内訳については、厚生労働省の資料を参考にして欲しい。

参考:厚生労働省『令和4年度雇用保険料率のご案内』

労働保険料のしくみで知っておきたいこと・注意点

労働保険料を納める際に知っておきたいことや注意点を紹介する。

労働保険料は毎年「年度更新」する
労働保険料の計算期間は、毎年4月1日から翌年の3月31日までの1年間だ。見込み賃金総額に基づき年度当初に概算で申告・納付し、翌年度の当初に確定申告してその過不足を精算するしくみであり、このことを労働保険の「年度更新」と言う。

支払われた賃金とに差額がある場合は年度終了後に調整する
先述したように、労働保険料は1年分を概算で前払い納付するしくみであるため、支払われた賃金と実際の額に過不足がある場合、年度終了後に差額分を調整しなければならない。納付額が多かった場合は次年度の労働保険料に充当し、少なかった場合は次年度の概算保険料に追加し納付する必要がある。

納付時期を過ぎると「追徴金」が発生する
労働保険料は、毎年6月1日から7月10日の間に納付する必要がある。納付期限を過ぎると追徴金が発生してしまうため、納付期限を忘れないように注意しよう。

申告・納付は所轄の労働局または労働基準監督署で行うことができるが、各金融機関のほかインターネット上でも行える。

年度の途中で雇用が生じた場合は50日以内に申告する必要がある
年度の途中で新たに労働者を雇用した場合は、保険関係成立後から年度末までの見込み賃金総額に基づき、概算で保険料を算出し申告する。その際に注意したいのは、申告期限は50日以内になることだ。

反対に、年度の途中で従業員との労働契約を解消した場合は、その日から50日以内に確定申告を行う必要がある。確定保険料より概算保険料が多かった場合、その差額を従業員に還付しなければならないことも把握しておこう。

まとめ

労働者を雇用している事業主は、労働保険に加入する義務がある。年度当初に1年間分を概算で申告し、翌年度に確定申告して差額分を精算するしくみのため、作業が複雑だ。業務をスムーズに行うために、ここで紹介した労働保険のしくみや注意点、計算方法を役立てて欲しい。労働保険制度のルールは改定されることもあるため、最新の情報を確認することも忘れないようにしよう。

関連記事:『労働保険の電子申請の手続き方法について解説。ポイントをおさえてスムーズな申請を』