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企業が支払うべき労働保険料とは。年度更新や支払いを支援するサービスも紹介

2022.12.07
オフィスのミカタ編集部

賃金総額に労災保険と雇用保険の定められた料率を乗じる労働保険料は、企業が負担分を支払う義務がある。本記事ではそれぞれの保険の役割や仕組み、支払いにかかる手間をサポートするサービスについて紹介する。

労災保険と雇用保険とを総称した労働保険

労働保険とは労働者災害補償保険(労災保険) と雇用保険の総称。従業員が支払う賃金総額に労災保険と雇用保険の料率を乗じて得るのが労働保険料となる。

労働保険料は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位として、保険料を算定する。そのため、毎年6月1日から7月10日までの間に「年度更新」を行う必要がある。

なお、労災保険料は全額事業主負担、雇用保険料は、事業主と労働者双方で負担することになっている。

以下の記事では労働保険の年度更新に関するフローや注意点を解説している。ぜひ一読してほしい。
おさえておきたい!バックオフィスの基礎知識 Vol.1 6月は労働保険料の更新月。手続きフローや注意点を詳しく解説

従業員の傷病などに対して必要な保険給付を行うための労災保険制度

労働保険のうち、労災保険制度の仕組みについて解説する。

労災保険における適用範囲と加入対象者
労災保険は業務の規模に関係なく、一人でも労働者がいる事業が適用となる制度。以下の労働者が加入対象者となる。

・全ての一般労働者(パート・アルバイト、日雇い労働者を含む)
・船舶所有者に雇用されている船員保険の被保険者
・派遣労働者(派遣元で加入する)
・海外出張中の従業員

加入対象外となるのは、
・執行役員(例外もあり)
・事業主の親族(一般労働者と同じ就労実態と賃金支払実績がある場合は加入対象となる)
・海外派遣中の従業員(特別加入制度の利用が可能)
となる。

また、雇用されている労働者が対象となるため、事業主や自営業者は原則加入ができないが、特別加入制度の利用による加入が認められるのが以下となる。

・中小企業の事業者
・一部の一人親方や特定作業従事者
・自営業者
・海外派遣者

対象者の範囲が広い上に例外で対象となる範囲も多いため、自社の従業員が対象となるのか、しっかりと確認するようにしてほしい。

労災保険に加入するための手続き
労災保険の適用事業者となった場合、所在地にある労働基準監督署または公共職業安定所に以下の書類の提出が必要だ。

1.労働関係設立届
2.概算保険料申告書
3.履歴事項全部証明書(写)

3つの書類のうち、1は10日以内、2は50日以内が提出期限となるので注意したい。なお、労災保険は事業所単位での加入となるため、新たに雇用するたびに加入手続きをする必要はない。

労災保険の保険料率と計算方法
労災保険料率は業種ごとの労働災害リスクの高さによって異なる。もっとも高い料率は鉱業の88%で、もっとも低い料率は通信業、放送業、新聞業または出版業など数種の職種で設定されている2.5%だ。

労災保険料は賃金の総額(月給+賞与)に事業主ごとの保険料率を乗じて計算する。

平均賃金 × 従業員数 =  前年度(4月1日〜翌3月31日)の全従業員の賃金総額
前年度(4月1日〜翌3月31日)の全従業員の賃金総額 × 労災保険料率 = 労災保険料

従業員の生活・雇用の安定と就職促進に活用する雇用保険制度

従業員の生活・雇用の安定と就職促進に活用する雇用保険制度

失業した際や職業訓練を受けている際に失業等給付の支給を受けられるようにするために設定された雇用保険制度。加入要件や手続き方法を見ていこう。

雇用保険に加入するための3つの条件
労災保険と違い、雇用保険は3つの条件を満たした人のみが加入できる。条件は以下の通りだ。

1.勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがある
2.所定労働時間が週20時間以上
3.学生ではないこと(例外あり)

3の例外とは、通信教育、夜間、定時制の学生のことを指し、これらに所属する学生の場合は雇用保険加入の対象者となるため、学生を雇用する場合はしっかりと確認してほしい。

雇用保険へ加入する際の手続き方法
雇用保険の適用事業所を新たに開設した場合、設置の翌々日から10日以内に管轄のハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」と従業員数分の「雇用保険被保険者資格取得届」を届け出る。

さらに、新たに雇用保険適用となる従業員が入社するたびに、雇用関係が発生した月の翌10日までにハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する。

雇用保険における事業主が負担すべき保険料率
雇用保険料率は毎年見直しが行われており、4月1日から翌年3月31日までの1年間、同じ保険料率で計算される。労災保険ほどに細かな業種分類がなく、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3種となる。参考までに2022年10月1日から2023年3月31日までの雇用保険料を紹介する。

労働保険料の納付方法

労災保険と雇用保険の2つの労働保険料は毎年6月1日から7月10日(7月10日が土日に当たる場合は翌月曜日)の間に申告と共に納付を行う。概算保険料が一定金額を超えた場合などは分割納付が認められるが、原則は一括納付となっている。

納付方法は金融機関の窓口を利用しての納付から電子申請まで複数ある。1つずつ見ていこう。

労働局から郵送される申告書を作成して金融機関などにて納付する
紙で申告した場合、「概算保険料申告書」と「納付書」、保険料を添えて、管轄の都道府県労働局や労働基準監督署、金融機関のいずれかへ赴いて納付する。

口座振替を利用しての納付
窓口へ行く手間や納付忘れ・遅れを減らすことができる口座振替も納付方法として有効だ。口座を開設している金融機関窓口で事前に口座振替の申し込みをする必要があるため、注意したい。

電子申請「e-Gov」を利用して電子申請する
2020年4月から特定の法人を対象に労働保険のうち、雇用保険を電子申請「e-Gov」で行うことが義務化されたこともあり、電子申請にて納付する会社が増えている。e-Govは各府省が管轄する行政手続きを、電子申請システムを利用して進める仕組み。

アカウント登録した後、申請・届出ができるようになり、納付にはATMやネットバンキングといった電子納付が可能になる。

e-GOVは、バックオフィスサポートツールと連携しているケースも多く、ツールを利用すれば年度更新の自動化や簡単な作業でe-GOVによる申請が可能になる。

年度更新や納付をサポートするおすすめのサービス

労働保険料の年度更新や納付は基本的に年に一度だが忘れると延滞金が課せられるなど、痛手を負うことになる。そうならないために、自動更新ができるなどのサポートをしてくれるサービスを紹介しよう。

freee人事労務
労働保険の年度更新の申告書の内容を自動で計算してくれるため、年度更新にかかる手間が一気に削減できる「freee人事労務」。e-govと連携していることから、電子申請と納付もすべての操作が画面上で完結することが可能だ。
https://www.freee.co.jp/hr/labor-insurance/annual-renewal/

SmartHR
労働保険の年度更新手続きをパソコンですべて作業できる「SmartHR」。保険料の納付も電子納付により行える心強いサービスだ。
https://smarthr.jp/

ジョブカン
従業員の情報を一元管理し、バックオフィス業務を効率化する「ジョブカン」も労働保険手続きの味方だ。e-Govと連携しているため、書類の提出も電子申請でできる。
https://lms.jobcan.ne.jp/

マネーフォワード クラウド社会保険
労働保険の設定や保険料率の編集が簡単にできる「マネーフォワード クラウド社会保険」は、e-Govと連携済みなため電子申請の利用も簡単。書類の提出、支払いにかかる作業時間を大幅に削減できる。
https://biz.moneyforward.com/social_insurance/

まとめ

労働保険料は従業員を抱える企業が負担すべきものだが、毎年の料率変更など手間も多い。今回紹介したおすすめのサービスはいずれも電子申請のe-govとの連携がされており、簡単に電子申請ができるようサポートしてくれる。ぜひ活用して労働保険に関する業務にかかる手間と時間を削減してほしい。