2024年2月「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況|倒産42件で4カ月連続の40件台
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産が、42件(前年同月比16.0%減)で、2023年12月から3カ月連続で前年同月割れが続いたことを発表した。本調査は、企業倒産(負債1000万円以上)のうち「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析したもの。
調査結果概要
TSRによると、2024年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産は、42件(前年同月比16.0%減)で、2023年12月から3カ月連続で前年同月割れが続いている。月次では2023年3月に最多の63件が発生したが、その後は次第に落ち着き、同年11月から4カ月連続で40件台で推移。初めて確認できた2020年7月からの累計倒産件数は、1302件に達したという。
TSRは本調査結果を受けて 「コロナ禍の急激な業況悪化で、多くの企業がゼロゼロ融資で窮状をしのぎ、企業倒産は記録的な低水準にとどまった。しかし、コロナ禍からの業績回復が遅れるなか、資金繰り支援の副作用で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しくなっている。さらに、物価高や人件費高騰、人手不足などで資金繰りは余裕を欠き、ゼロゼロ融資返済も負担になり行き詰まる企業が相次いでいる」とコメントした。
金融庁は、2023年1月から開始した「コロナ借換保証」制度や資本性劣後ローンなどの活用を促し、金融機関に継続的な伴走支援を求めている。中小企業庁も、今年2月から1年間の期限で、早期経営改善計画の早期策定を支援(補助上限15万円)することで、民間金融機関に経営改善支援の促進を求めている。
TSRはこれらの各種支援策について、どこまで効果があるか未知数であるとの見方から「ゼロゼロ融資」利用後倒産の動向はしばらく注視する必要があるとした。
出典元:2月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産 42件 4カ月連続で40件台に、小康状態が続く(TSRデータインサイト)
各分析結果
【産業別】
産業別では、サービス業他が12件(前年同月比20.0%減)で最多、全体の約3割(構成比28.5%)を占めた。次いで、建設業(前年同月同数)と製造業(前年同月比12.5%増)が各9件、小売業が5件(同66.6%増)、卸売業(同62.5%減)と運輸業(同40.0%減)が各3件、情報通信業が1件(同50.0%減)の順。
【業種別】
業種別(中分類)では、「飲食店」6件が最多。次いで「総合工事業」5件が続く。このほか、「食料品製造業」と「織物・衣服・身の回り品小売業」が各3件で並び、飲食関連やアパレル関連の苦境を反映した。
【形態別】
形態別は、破産が38件(前年同月比7.3%減)で最多。特別清算2件(前年同月ゼロ)と合わせた『消滅型』倒産は40件(前年同月比2.4%減)で9割超(構成比95.2%)を占めた。『再建型』は民事再生法が1件(前年同月4件)で、2カ月連続で発生している。
【従業員数別】
従業員数別の最多は、5人未満の22件(前年同月比8.3%減)だった。次いで、10人以上20人未満が8件(同27.2%減)5人以上10人未満が6件(同14.2%減)で続く。10人未満の小規模企業は28件で、約7割(構成比66.6%)を占めた。
【地区別】
地区別の最多は、関東の17件(前年同月21件)で4割(構成比40.4%)を占めた。次いで、九州8件(前年同月5件)中国6件(同ゼロ)東北5件(同9件)北海道と中部が各2件(同3件)近畿(同8件)と四国(同ゼロ)が各1件の順。都道府県別では、東京都が9件(前年同月11件)で最多。このほか、広島県が4件(同ゼロ)宮城県が3件(前年同月同数)で続く。
まとめ
支援策による過剰債務から新たな資金調達が難しくなっている企業にとって、コロナ禍からの業績回復の遅れに加え、物価高や人件費の高騰の影響は少なくないだろう。
金融庁は、実質無利子・無担保融資の返済開始が2024年4月に最後のピークを迎えることを受け、債務が膨らんだ事業者に対して早期の経営改善・事業再生・再チャレンジ支援の必要性が高まっているとして、2024年3月8日に「再生支援の総合的対策」を策定。官民金融機関等による再生支援等を一層促すための施策をとりまとめた。
こうした新たな支援策がどの程度の効果をもたらすか、TSRが促しているように、今後も「ゼロゼロ融資」利用後倒産の動向に注目したい。
参考:再生支援の総合的対策(金融庁)