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「トランプ関税」の影響「マイナス」と捉える企業が増加傾向 TSR調査

2025.06.18

トランプ米大統領の「相互関税」の導入発表から2カ月。各国が米国政府と交渉を重ねるなか、株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は「トランプ関税」に関する第2回目の企業アンケートを実施。企業での影響の精査が進むにつれ「マイナス」に受け取める企業が増えてきていることを報告した。

調査概要

調査期間:2025年6月2日~9日
調査方法:インターネットによるアンケート調査を実施
有効回答:7113社
出典元:「トランプ関税」 「マイナス」回答が57.6%に上昇 中小企業は「情報提供」と「資金繰り支援」を求める(株式会社東京商工リサーチ)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義

「マイナス」が約6割 廃業や会社売却、部門閉鎖の可能性は?

「マイナス」が約6割 廃業や会社売却、部門閉鎖の可能性は?

本調査ではまずはじめに、アメリカの関税引き上げが業績にどのように影響するか質問。その結果「少しマイナス(45.8%)」との回答が最も多く、次いで「影響は生じない(38.3%)」「大いにマイナス(11.8%)」が続いたという。「マイナス」の合算は57.6%となり、2025年4月調査(52.3%)よりも5.3ポイント上昇している。

また、業種(中分類)別の「マイナス」は、ゴムやタイヤ製造の「ゴム製品製造業(92.3%)」が最も多く、次いで「鉄鋼業(88.2%)」「非鉄金属製造業(84.6%)」と、自動車などの輸送機械製造にかかわる業種が上位に並んでいる。

続いて本調査では、Q1で「マイナス」と回答した企業へ、廃業・会社売却や一部事業部門の閉鎖・売却を検討する可能性について質問。その結果「廃業・会社売却を検討する可能性がある(1.5%)」「一部事業部門の閉鎖・売却を検討する可能性がある(2.2%)」と、合計で3.7%の企業が事業継続を諦めたり、事業規模の縮小を検討したりしていることが明らかになった。

本調査ではさらに、廃業・会社売却や事業部門の閉鎖等を検討している企業の構成比を産業別で分析。その結果、最大が「製造業:4.8%(1165社中、57社)」「小売業:4.6%(193社中、9社)」「不動産業:4.5%(111社中、5社)」「情報通信業:4.3%(182社中、8社)」と、4産業で構成比が4%を上回っている。

雇用・採用計画や賃上げへの影響は?

雇用・採用計画や賃上げへの影響は?

次に本調査では、トランプ関税が雇用・採用計画に与える影響について質問。「ネガティブに影響することはない(87.2%)」との声が多く、業績面ではマイナスであっても、雇用や採用は従来通り進める企業が多いことが明らかになった。

一方で、雇用・採用計画に影響が出るとした企業では「採用を抑制する(10.3%)」「非正規社員を削減する(予定含む)(2.7%)」「正社員を削減する(予定含む)(1.8%)」といった声が挙げられたという。

続いて、トランプ関税が今年度の賃上げに与える影響を尋ねる項目でも「ネガティブに影響することはない(78.0%)」との声が多く寄せられている。規模別では「大企業(91.0%)」が9割を超え「中小企業(76.9%)」を14.1ポイント上回る回答となった。

賃上げに影響が出るとした企業では「賞与の増額を見送る、もしくは増額幅を縮小(12.1%)」との声が最も多く、次いで「ベースアップを見送る、もしくはアップ幅を縮小(10.5%)」「定期昇給を見送る、もしくは昇給幅を縮小(7.0%)」が続いている。

来年度の賃上げに与える影響についても「ネガティブに影響することはない(70.8%)」が最も多いものの、今年度の同回答(78.0%)と比較すると7.2ポイント減少。マイナス影響の度合いによっては今後の賃上げに支障が出る企業が多いことがわかった。

来年度の賃上げに影響が出るとした企業では「賞与の増額を見送る可能性(16.5%)」に次いで「ベースアップを見送る可能性(15.9%)」「定期昇給を見送る可能性(9.0%)」「再雇用者の賃金引き上げを見送る可能性(5.6%)」との声が寄せられている。

まとめ

トランプ関税によって、業績への影響を「マイナス」と捉える企業が増加傾向にあることが判明。雇用計画や賃上げについては早期の影響は少ないとの声が寄せられているものの、マイナスの度合いによっては影響が強まる可能性が示唆されている。

こうした状況の中、企業が政府や行政に求める支援策としては、中小企業では「給付金・助成金の支給」大企業では「影響の情報提供」がトップに挙げられたという。TSRは「国家間の交渉とともに企業との対話も重要になっており、官民が連携して関税をめぐる諸課題に対応することが必要だ」と提言する。今後どこまで国内企業の業績にマイナスの影響が及んでくるのか、引き続き動向に注目したい。