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経理業務における決算の基本。決算業務の流れやポイントを解説!

2022.09.22
オフィスのミカタ編集部

経理業務の中でも決算業務は特に重要度が高い業務だ。正確な知識が必要とされる業務のため、不安を抱える担当者も多いのではないだろうか。本記事では、決算業務の基本を解説する。また、決算作業を効率化する方法なども紹介するので、参考にしてほしい。

目次

●経理における決算業務とは
●経理で行う決算業務のステップ
●決算月に行う業務
●決算業務効率化に役立つ4つのポイント
●まとめ

経理における決算業務とは

経理が行う決算業務は、決算に向けて決算資料を作成することだ。ここでは、決算業務の概要を見ていこう。

決算業務とは
決算とは、企業の年間収益と費用を計算した数字を決算書の書類にまとめるまでの一連の工程のことを言う。決算を行うことで、企業の資金や負債を洗い出し、経営活動や財政状況を把握することができる。また、会社法により、全ての株式会社には決算書の作成が義務付けられている。さらに、法人税法でも「事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内」に税金を申告・納付することが義務付けられており、期末の翌日から2ヵ月以内に決算を行い、税金を計算・納付までを行う必要がある(上場企業をを除く)ことも覚えておきたい。経理の仕事には「日次業務」、「月次業務」、「年次業務」の3つのサイクルがある。決算業務はそのうちの「年次業務」にあたり、経理担当者にとっては1年間の取引の総まとめとなる大仕事といえるだろう。

決算の意義
決算はその年度における企業の最終発表だ。納税額が決定されるだけでなく、決算で明らかになった財政状況を基に、次年度の経営戦略や資金繰りも検討することになる。そのため、決算は企業全体の方向性を決める際にも重要な資料だ。またステークホルダーなどの外部関係者は、企業の決算書の発表を受け、投資や発注額を決定する。こうしたことこから、決算で作成される書類は企業の未来のために非常に重要といえる。

関連記事:『決算とは?目的や手続きの流れ、おすすめ会計ソフトなどを紹介』

経理で行う決算業務のステップ

ここからは、経理担当者が実際に行う必要のある決算業務をステップごとに見ていこう。

<ステップ1>決算残高の確定
決算業務に入る際には、まず決算残高を確定する必要がある。決算残高の確定とは、決算日の勘定科目の残高と、実際の残高を一致させることを指す。具体的には、帳簿上で管理している全ての勘定科目について、残高が一致しているかを確認していく。さらに、決算残高の確定時にも仕訳作業を行う必要がある。これは「決算整理仕訳」と呼ばれ、買掛金・未払金・棚卸資産・固定資産の処理を行い、通常業務の決算と区別するための作業だ。

決算残高が確定したら、勘定科目の詳細を記入した「勘定科目内訳明細」を作成する。勘定科目内訳明細は法人税申告時の提出書類の一つのため、必ず作成しなければならない。

<ステップ2>税金の計算
決算残高の確定後、確定額を基に税額を計算する。経理業務で計算する税金は「法人税」と「消費税」の2つだ。税計算を行う際に決算残高が誤っていると納税額も誤りとなり、申告後にペナルティを課されることもあるため、念入りに確認を行おう。

さらに、法人税を計算する際は、会社の規模や利益に応じて税率が変更になることも覚えておきたい。また、計算する法人税の種類は「法人税」「事業税」「法人市民税」「法人県民税」がある。これら4つの法人税を計算し納税額を確定しよう。

一方、消費税は売上に含まれる消費税から仕入れや経費に含まれる消費税を差し引いて求める。ただし、計算して求める消費税額と帳簿上の消費税額には差異が発生することを覚えておきたい。この際の差異を修正し、消費税額を確定した上で、未払消費税として決算書に計上する必要がある。

<ステップ3>決算書の作成
最後に、決算書を作成していく。確定残高を基に財務3表と呼ばれる下記の3つの書類を作成しよう。また、残高を確定した結果だけでなく、処理方法などに変更点がある場合には、注意事項を記載しなければならない。

・貸借対照表
貸借対照表とは、決算日における会社の財政状況(資産・負債)を示す決算書だ。貸借対照表からは会社が保有する資産や会社が返済義務を負っている負債、返済義務のない純資産などを把握できる。これにより会社の資産・負債のバランスで財政状況の良し悪しを確認することが可能だ。

・損益計算書
損益計算書は、期首から期末までの期間に発生した利益や損失を報告する決算書だ。損益計算書では、期末日における売上高などの「収益」と売上原価や販売費・一般管理費などの「費用」を差し引き、利益や損失を算出していく。一定期間における企業の経営成績が確認できるため、経営状況の可視化や、同業他社との比較で自社の状況を判断するのに役立てられる。

・キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、会計期間中の現金の流れを把握するための決算書だ。期首にあった現金が、期末にどれだけ残っているか、また、会計期間中に現金が増減した理由を記載する。

<ステップ4>申告・納税
決算書を作成できたら、それぞれの結果を確定申告書に記載し、申告・納税を行う。法人税の確定申告は「事業年度の終了翌日から2ヵ月以内」となっている。申告・納税が1日でも遅れると、無申告加算税や延滞税が課されてしまうため、申告書類の提出との納税期日は厳守しよう。

決算月に行う業務

経理担当者が決算月にのみ行う業務も確認しておこう。

棚卸
決算月に行う業務としてはまず、棚卸作業がある。棚卸は、売上に対する原価を計算することが目的だ。在庫数を確認するだけでなく、仕入れに使用した金額を洗い出す必要がある。そのため、購入したものの使用していない在庫量も数える必要がある。

減価償却資産の処理
減価償却資産の処理は、長期間使用する資産を年数ごとに費用計上していく作業だ。減価償却の規程は細かく決められており、減価償却資産として計上してよいかや、耐用年数の確認をしっかりと行う必要があるため注意して行いたい。

経過勘定の処理
経過勘定とは、現金の収支と期中に計上するべき収益および費用にタイミングのズレが生じた場合、そのズレを調整する処理を指す。例えば、継続して利用しているサービスなどで、毎月1万円の費用が発生しているが、使用料金は1年分をまとめて12万円を後払いするケースなどは、経過勘定の処理が必要だ。この場合、費用は毎月計上するが現金の支出がないため、現金の収支と計上費用にズレが生じる。これを経過勘定科目で仕訳し、ズレを調整していく。経過勘定の処理を行う代表的な勘定科目は下記のようなものがある。

・前払い費用
・未払い費用
・貸し倒し引当金
・開業費などの繰越資産の処理
・仮払金、買受金の計上

精算表及び勘定科目内訳書の作成
精算表は決算書の勘定科目の貸借が合っているかや、現金残高の整合性のチェックのために作成する帳簿だ。決算整理前の残高試算表から損益計算書と貸借対照表を作成するまでの一連の流れをまとめた概算表で、精算書の作成により決算手続きの概要を一覧で把握できる。

勘定科目内訳書は、法人税申告書に添付して提出しなければならない書類だ。内訳書には各勘定科目の期末残高を転記していく。この期末残高は貸借対照表や損益計算書の残高と一致している必要がある。残高が一致していないと、税務署に勘定科目内訳明細書の信憑性を疑われることにつながり、税務調査のリスクが生じるため、入念な確認が必要だ。

関連記事:『精算表を作る意味とは?精算表の作成目的から作成方法までわかりやすく解説』

決算業務効率化に役立つ4つのポイント

決算業務は経理業務の中でも特に負担が大きく、煩雑化しやすい業務だ。最後に、決算業務の効率化に役立つ4つのポイントを紹介しよう。

<ポイント1>決算業務を早期に行う
決算業務は早めに着手することをおすすめする。決算日は決まっているため、決算日前後で行う必要のある業務と、決算日前でも行える業務を整理しておこう。決算日前に着手できるものは、前倒しで作業に取り掛かれば、余裕を持ったスケジュールで業務を行え、ミスの削減にもつながるだろう。

<ポイント2>データ整理や優先順位をつける
決算業務では扱う資料などが膨大となるため、日々業務で利用するデータを整理し、決算業務の流れから逆算した上で処理を行うデータに優先順位をつけることが重要だ。決算書類にはミスは許されないため、効率よく作業ができるよう普段からデータの整理を行うなどの工夫をしておくのがよいだろう。

<ポイント3>アウトソーシングの活用
アウトソーシングの活用も効率化を叶える手段の一つと言える。決算業務の負担が大きく、長時間労働などにつながるリスクが考えられる場合には、業務負担軽減の観点からも利用を検討してもよいだろう。ただし、アウトソーシングを行う際には、機密情報を外務に委託することとなるため、安全管理体制を念入りに確認しよう。

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<ポイント4>会計管理システムを使用する
会計ソフトやクラウドシステムの導入も効率化に役立つだろう。日々の経理業務の自動化などが可能となり、正確な帳簿管理を行えることがメリットだ。日々の経理業務の正確性が上がれば、決算業務における工数の削減も可能となり、効率的に決算業務が行えるだろう。

関連記事:『経理の業務改善。効率化する方法やコツ、業務改善のメリット』

まとめ

決算業務は経理にとって年に1度の大仕事であり、企業にとっても非常に重要なものだ。正しく決算を行うために、まずは、担当者がしっかりと知識を付けることが必要だ。一方で、決算作業は煩雑な作業が多いことから、経理担当者の負担は大きく、効率化も課題となっている。アウトソーシングやシステムの導入などで効率化の期待ができるため、導入を検討してみるのもよいだろう。